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十代「新年まであと少し、そろそろカウントダウンが始まるな」 なのは「今年はいろんな事があったね、十代達やネオスペーシアンと出会えたりして」 エド「……それはいいとしても、何でここでやるんだ」inフィールド魔法「幽獄の時計塔」 レイ「いい会場が取れなかったから、カウントダウンに最適な場所はないか十代様に相談してみたんです」 十代「エドが運良くこっちに来てたから、ふと思い出したんだ、いいだろ?」 エド「十代、まったく君というやつは…」 はやて「まあまあ、それにしてもフィールド魔法って便利やなあ、これなら周囲への被害を抑えながら戦えそうやし」 スバル「ところで、彼らって…」 十代「年明けなんだから、相棒や仲間達とも一緒にと思ったのさ」 ティアナ「そうじゃなくてサイズがおかしいような?」 時計塔と並び立つネオス、肩にはネオスペーシアンたちが乗っている 十代「ああ、デュエル中は縮小されてるけど、これがネオスの本来の姿なんだ」 はやて「こんなにでかかったんやな、まるで光の巨人や」 なのは「……闇の力の使者でもあるから、言動がちょっとね」 レイ「十代様、そろそろカウントダウンが始まりますよ」 時計塔の針がゆっくり時を刻み、12時となった 全員「新年あけましておめでとう」 フェイト「今、時計塔が歪んで見えたような…」 エド「幽獄の時計塔のエフェクトが発動したのさ」 なのは「エフェクト?」 エド「幽獄の時計塔に時が満ちた時、それをコントロールしている者をあらゆる戦闘ダメージから守るのさ」 十代「こういうことさ、相棒」 ハネクリボーがエドに向かって飛んでいくが、見えない障壁に阻まれて接近できない エド「……十代、いいかげんに……」 はやて「便利やなあ、うちでも採用したいぐらいや、でも時計塔はわかるけど何で「幽獄」なんや?」 エド「こういうことさ、フィールド魔法「ダーク・シティ」発動」 時計塔が崩れ、新たなフィールドが形成され始める エド「この時、幽獄の時計塔に幽閉されていた男が解き放たれる、カモン!D-HERO ドレッドガイ!」 十代「わ、悪かったって、エド」 エド「ドレッド・ウォールで墓地のD-HEROを蘇生し、いけ!プレデター・オブ・ドレッドノート!」 十代「何で新年早々こういうオチになるんだ、うわあああ」 単発総合目次へ 遊戯王系目次へ TOPページへ
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「いったい……何なんだよ?……てぇ!リンカーコア!!!」 しばらく呆然と仮面男をみていたが本来の目的を思い出すと、砂竜に目を向ける。 ビクビクと痙攣ていたが回収には問題なさそうだった。 「よかった……間に合った」 ホゥっと安堵のため息をつくと倒れた砂竜に近づきリンカーコアを回収した。 「あ……」 そこで気が抜けたのかヴィータは意識を手放した。 「む、いかん。トォッ!!」 ジャンプし少女をキャッチする 「どうみても人間の女の子だな……」 ―――魔法少女リリカルなのはA s―S.I.C―帰ってきたV3―――第2話「仮面ライダーだった男」 彼は混乱していた。 いつものように当てもなくこの世界を彷徨い、砂竜を狩る いつか自分を倒せるほどの個体と出会うこと ここ最近はこのあたりで発生した新種を探していた。 ルーチンワークとなりかけた自分が期待していたのがヴィータと戦っていた巨大砂竜だった。 通常の固体よりも強い識別呼称『白い悪魔』 暴れた後には高熱によりガラス化した砂が残っていたことから なんらかのエネルギーを使用した攻撃をすると予想された。 打上げたV3ホッパーからの情報を解析し最大の熱量を探し出し、現場に急行したときにはすでに戦闘が始まっていた。 自分の標的と戦っている者、その相手は可愛らしい衣装を纏った少女だったことに驚きつつも、 とうにこの世界で滅亡してしまった人類の姿をこの異常な事態のなかで目撃した。 「生き残りの筈がない。あんな地獄で……生き残れるはずが……」 核の炎が全てを吹き飛ばしたとはいえ、初めの頃は僅かな生き残りもいた。 しかし、激変した地球環境は人類に優しくは無かった。 ”タスケテ” ”ナンデ オマエダケ?” ”クルシイ クルシイ” ”シニタクナイ” 怨嗟の声を上げながら死にゆく人々をみることしかできなかった自分。 あの地獄ですらこの躯を機能不全に陥らせることができなかった。 生命維持装置、パワー調整装置、その他いくつかの装置は正常に稼動し、平時と変わらないコンディションを保つようにしていた。 あのときほど自分の躯を呪ったことはなかった。 かつてない程の無力感を感じた。 何度倒されても諦めず戦い続けた いくらかましになったとはいえ、今でもこの星は人類が生活できるような生易しいものではない。 そう、彼のような改造人間でもない限り。 だが、Oシグナルの反応では機械的な部分は関知できない 。 「普通の少女だというのか?しかしあの力は……む?これは…」 腕の中で眠る少女へセンサーを稼動させるとやはり違和感を感じた。 さらに精査を行おうとしたその時… 「ヴィータ!!」 桃色の髪を結わえた剣士と、何故か犬の耳が生えた筋肉質の男が宙に浮かんでいた。 シグナムは混乱していた。 定時連絡がこないのはいつものこと(蒐集に夢中になって忘れている)だったが、こちらからの連絡には応えていた。 しかし、今回はこちらがいくら呼びかけても反応が無い、ただでさえ管理局だけでなく妙なやつらもうろついているということが 焦りに拍車をかけていた。そのために念のためザフィーラとともにヴィータがいった世界へ向かっのた。 そこでシグナムが見たものは夥しい砂竜の屍の山と黒煙、そしてその中心にいる仮面男だった。 人間型の生命体が存在しないはずの世界にいる人型の存在。 この世界に人類はいないはずだった。正確にははるか昔に滅亡している。 ならばこれはいったい?この砂竜の屍の山をやつが築いたのか? 実際はほとんどヴィータがやったのだが、この状況ではやつが殺戮者にしかみえなかった。 ふと、その腕に抱えられている小さな姿に気づき思わず叫んでしまった。 「今日は千客万来だな」 「貴様!ヴィータに何をした!?」 仮面男の飄々とした態度にいらつきを隠せず怒鳴った。 「慌てるな、気を失っているだけだ」 言いながらヴィータの体を横たえた 「貴様いったい何者だ?」 「それはこちらが聞きたいな招かれざる客だというのは分っているのだろう」 「……ヴォルケンリッター、烈火の将シグナム」 「盾の守護獣ザフィーラ」 「ヴォルケン、リッター……ドイツ語?」 かみ締めるように呟いた。 「そんなことより貴様は何者だ!」 ククク、と笑い声を上げる シグナムは怪訝な顔で男を見た 「悪いな、”人”と会話をしたのは久しぶりでな、この世界でのただ一人の生き残りとしては、歓迎すべきかせざるべきか……俺の名はV3、か…いや、ただのV3だ」 「V3……?」 「なるほど、見た目どおりただの人間ではないか、存外、戦闘能力も高そうだ」 こちらを品定めをするような様子で見た。 「ちょうどいい、久しぶりに戦い甲斐ののありそうな相手だ……俺と戦え!」 「なにっ!?」 「くっ! ザフィーラ!ヴィータを頼む。私はこいつを抑える!」 「トオオォッ!!」 雄叫びを上げ一直線に電光石火のパンチを打ち込む。 軌道を剣で逸らし、返す刀で切り込むが 「オオオオオオオッ!」 続けざまに打ち込まれる拳をレヴァンティンでいなす。 「V3ィ!」 エネルギーを左腕に集中させる。 「電熱チョップ!!」 赤熱化した左腕を振るいレヴァンティンのガードを弾いた。 「V3パァンチッ!」 がら空きになった胴体めがけて繰り出された拳を辛うじて左腕で防御する。 が、 「ああああああああ!!」 ガードした右腕ごとシグナムは弾き飛ばされる。 「ヤアアアアッ!」 その隙を逃さず、キックを繰り出すが、シグナムは長剣レヴァンティンを振って弾き飛ばした。 V3は弾かれた反動を加えて跳ね、体勢を整えると身を翻して再度蹴りを叩き込む。 「V3ィ!反転キック!」 「がああああああ!」 衝撃を受けきれず、シグナムは砂漠に叩きつけられた。 V3は追撃せずに待つ。 「どうした?この程度か?」 もうもうと噴きあがる砂煙の中から声が聞こえた。 「レヴァンティン、カートリッジロード!」 「Jawohl.(了解)」 レヴァンティンを鞘に収めカートリッジを消費する。 「Nachladen. (装填) 」 ガシュンと使用済みカートリッジが排莢された。 「Schlangeform.(シュランゲフォルム) 砂煙の中から飛び上がったシグナムは変形して連結鎖刃形態となったレヴァンティンから必殺の一撃を放つ。 「はあぁっ! 飛竜一閃!!」 莫大な魔力を纏った炎の蛇の突撃は最早突きではなく砲撃だった。 上空から迫るその一撃を避けることができず真正面から食らってしまった。 「オ、オオオオオッ!!」 大音響と共にV3は爆炎で包まれた。 「はっ!はっ!危なかった。が、これでお終いだ……!?」 息を整え、せめて亡骸を確認しようと煙が晴れるのを待ったシグナムは信じられないものを見た。 爆炎が晴れた先にはV3はそこに立っていた。 両腕を交差させ、完全防御体勢をとっていたが 「馬鹿な!? 直撃だったはずだ!」 自分の技を喰らって魔力も持たないモノが無事でいられるはずがない。 シグナムは知らなかったがV3の躯は脳以外を全て機械化している。 そのため、純魔力攻撃では思ったほどのダメージを与えることができなかったのだ。 思わず呆然としてしまったシグナムに構わず、V3は防御をといて次の攻撃に移った。 「今度はこちらの番だ!決めさせてもらう……ハリケーン!!」 ブオオオオオオオオオオオンンッ!!! 馬がいななくようにあたりにエンジン音が響く。 長年連れ添った相棒。長い戦いの末に共に改造を受け続けたハリケーンは主の呼び声に応え、 砂地をアスファルトと変わらぬ速さで駆けてくる。 「トオッ!!」 V3とハリケーンは同時にジャンプ、高速回転するタイヤに足をつけ反撥。 V3自身の体を高速回転させ超スピードで目標に向かっていくが、シグナムはその軌道を読み回避した。 「甘い!」 しかし、V3はOセンサーで正確に居場所を探り、軌道を変えて直撃コースに載せ変えた。 「なっ!?」 今度は避けきれなかった。 「V3ィィィイ!!!マッハァッ!!!キィィィィィィィィィック!!!!」 猛特訓の末に編み出しツバサ一族の長、死人コウモリを葬り去った文字通りの必殺キックがシグナムの腹部に炸裂した! その瞬間両者は弾かれ、砂の大地に叩きつけられていた。 「………くっ!なんて威力だ…!」 騎士甲冑で軽減されたとはいえ 腹部に手を当ててよろめきつつもシグナムはまだ立っていた バリアジャケットはボロボロになっていたがその役目はしっかりと果たしていた。 本来ならば改造人間を真っ二つにするほどの威力を秘めた一撃を大きく減衰させたのだ。 それでも無視できないダメージを与えられてしまった。 まさかここまでとは……! シグナムは驚愕を隠せなかった。 スピード、パワー共に強力 一撃一撃が、単なるパンチやキックでは無く、自分の体を知り尽くした上で数々の修羅場を潜り抜けてきて鍛えあげた技だ。 リンカーコアは持っていないようだがその不利を補って余りある、いや不利にならないほどの強さだ この男は魔法を使えない、それでもかつて戦ったフェイト・テスタロッサどころか、 自分たちヴォルケンリッター以上の戦士であるかもしれない。 ヴィータはザフィーラに任せたのは正解だった。 言いたくは無いが気絶したヴィータがいてはザフィーラとの2対1とて危なかっただろう。 そんなことを考えていると人影が見えてきた。やはりあの程度では倒せなかった。 砂煙で隠されていたV3の姿が顕になった、胸の装甲が斜めに切り裂かれている。 「ハハ」 V3は笑いを堪えられなかった。 キックのタイミングにあわせてカウンターを仕掛けてきた! 彼女ならが俺の望みを叶えてくれるかもしれなかった。 この永遠の躯に終止符を打ってくれるかもしれない どんなに苦しくとも自殺はできなかった、最後まで戦士であるためだ。 それは、自分の信じたもののために戦った自分の最後を誰かに見届けて欲しいという願望だった。 もう”仮面ライダー”とは名乗れないのだから。 世界の平和と人類の自由を守るために戦う戦士が仮面ライダーだ 己自身の自殺のために戦う今の自分に"仮面ライダー"を名乗る資格はない そして、仮面ライダーは無敵でなければいけない だからこそ自分は戦士"風見志郎"として戦い、死ぬしかないのだ。 そこで、ふと思い出す。かつて恩師との会話を “ オヤジさん・・・だめだ あの怪人は強過ぎるんですよ ” “ でも俺は精一杯やっ ― あっ っううっ― ” “ 俺は無理な事を頼んでいるんだ! ” “ 仮面ライダーV3は無敵で在って欲しい! ” 仮面ライダーは無敵である 唯一絶対の約束を守って今まで生きてきた。 「……わかってるさ、オヤジさん。俺は……仮面ライダーV3は無敵『だった』。だから……もう、いいよな?」 「いくぞ!俺を………殺して見せろ!!!!……騎士よ!!!」 「来い!戦士V3!!」 仮面ライダーだった男、V3! 風見志郎は死ぬために戦う! 両者は再び構える。 次で勝負が決まる。 どちらも自身の最大の技を繰り出す構えを取ったのだ。 だが、そのときだった。 「何!?」 「馬鹿な!?…こいつらは!!」 GLUUUUGAAAAAAA!!!!! 奇怪な雄叫びが砂漠に木霊する。 10や20どころではない、100にも届こうかという数だ。 この世界においての”古代の遺物(ロストロギア)” ミイラの改造人間、不死身の兵たちが砂の中から出現し、2人の周りを取り囲んでいた。 前へ 目次へ 次へ
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マクロスなのは 第7話『計画』←この前の話 『マクロスなのは』第8話「新たな翼たち」 「ここが校舎だ」 食堂から出てミシェルに案内された場所は所内にある比較的古いコンクリート打ち付けの建物だった。 表札もおそらく昔の名前、『技術開発研究所 化学部門』となっている。 「案外古い建物を使ってるんだな」 アルトの呟きに、玄関の階段に足をかけたミシェルが答える。 「ここにはまだ予算があまり割かれてないんだ。まだ訓練を始めて2週間だからな」 「そんなものか」 アルトは階段に足を掛けながら後ろを歩く生徒達を流し見る。 昼食の時に話を聞いた所、大多数がリンカーコア出力がクラスBの空戦魔導士だった者達で、一様に理系―――――特に工学を学んだ者で構成されていた。(そのためか女子生徒は1人のようだ) やはりバルキリーに乗るためには自分の乗っている物がなぜ飛ぶのか、そういう事がわからなければ緊急時に対応できない。そのことを管理局も理解しているらしかった。 玄関をくぐると、ミッドチルダには珍しい褐色の肌をした男と鉢合わせした。 「よう、ミシェル。・・・・・・ん?そちらの2人は?」 「ああ。さっきのリニアレールの事件で手伝ってもらった、機動六課の高町なのは一等空尉に、〝アルト姫〟だ」 アルトは聞くと同時にこの金髪のクソ野郎をぶん殴ってやろうかと思ったが、彼にはそれでわかったらしい。 「ああ、あなたが。噂は聞いています。私は第51次超長距離移民船団『マクロス・ギャラクシー』所属、新・統合軍のミラード・ウィラン大尉です」 教官をしていて今の階級は三等空佐ですが。とつけ加える。 「こんにちは、高町なのはです」 笑顔で応対するなのは。一方、『マクロス〝ギャラクシー〟』と聞いたアルトは一瞬身構えたが、彼の友好的な顔からは敵意はまったく感じられなかったためそのまま会釈だけで簡単に流した。 「こんにちは。・・・・・・しかし噂通りお2人とも美しい女(ひと)だ。・・・・・・ああ、そういえばアルトさんは報道でお見受けした時もそうでしたが、普段から〝男装〟をされているんですね。それでも内に秘めた美しさが垣間見えるようでよく似合っておいでですよ」 まったく悪意のないウィランの自然な言葉に、後ろから生徒達のクスクス笑いが聞こえる。 「だ、誰が男装だ!!誰が!?」 アルトは全力で否定した。舞台以外で性別を間違えられるなど、自身のアイデンティティーに関わる。 ウィランもこの美青年の声にようやく気づいたようだ。 「え?・・・・・・あ、いや失礼。ミシェルの話から早乙女アルトは女性だとばかり―――――」 どうやらさっきのスパイス、そしてこれはミシェルの差し金だったらしい。 「ミ・ハ・エ・ル、貴様ぁ!!」 激昂するアルトに 「俺に勝ったら男の子って認めてやるよ。〝姫〟」 と涼しい顔。 突然険悪になった2人を生徒やウィランはハラハラと、なのはは苦笑しながら見ていた。 (*) 「それでは当初の予定通り、午後はシュミレーターによる実習だ」 ミシェルが生徒を前に宣言する。 彼の後ろには縦2メートル、横5メートル、奥行き3メートル程の箱がある。どうやらあれがシュミレーターらしい。中にはバルキリーの操縦席がある。 「内容は会敵、戦闘となっている。だが、これで5分も持たないような奴は―――――」 ウィランが鋭い視線で生徒達を威嚇した。 ミシェルが時たま見せる眼光にもスナイパーであるためか見られたものを竦み上げさせる力があったが、所詮まだ高校生。40以上で、下っ端からの叩き上げという彼とは場数が違った。 そうして生徒の1人がデバイスを起動してバリアジャケットに換裝する。それは紛れもなく軍用EXギアだった。どうやら『メサイア』とは腹違いの兄弟らしい。 着なれているらしく、シュミレーターに乗り込む彼の動きに無駄はなかった。どうやら訓練を始めてから2週間というのは本当らしい。 シュミレーターが稼動すると他の生徒達はディスプレイの前に集まる。どうやらシュミレーターとこの画面とはリンクしており、観戦ができるようだった。 画面に浮かぶ自機、VF-0はクラナガン上空を飛ぶ。そこに現れたのは50機を優に越えるであろうガジェットⅡ型の大編隊。 本来の生身の戦闘ではとても勝てないであろう彼らに向かってVF-0は獰猛果敢に突入する。 アルトはこの戦いを見てこの訓練は始まったばかりだと感じた。可変の使い方を心得ていない。 可変という特殊機構をもつVFシリーズは戦場を選ばぬ全領域の汎用性がある。そのためこの機構を使いこなしているかで即、技量がわかる。 可変の使い方の基本としては、ファイターは高速度と高機動を生かして敵中突破または距離をとるために。ガウォークは戦闘ヘリのような小回りを生かしての戦い。バトロイドは腕という名の旋回砲塔による全方位攻撃や近接戦闘に。 しかし元空戦魔導士だった彼らはファイター又はバトロイド形態に固まってしまい、ガウォークを中間とする流れるような運用ができていなかった。しかしそれでも頑張っていられるのは魔導士時代の実戦経験と、戦闘のノウハウがあることが大きいだろう。 これがある者は例えバルキリーの操縦カリキュラムをすべて履修したが、実戦経験がないという者に比べても差は歴然である。 これのない者は戦場では空気だけで押しつぶされてしまい、実力の半分も出せない。対してある者は冷静に事態を見つめることができ、なおかつ経験を元に独創的な戦法を思いつくことができる。 さらにここの1期生達は元は優秀な魔導士だったらしい。ただ、ガジェットを相手にするにはリンカーコアの出力が低かったため戦力外通知され、ここに引っこ抜かれたという。 そのため1期生は戦闘技術なら実戦レベルであり、バルキリーに慣れさえすれば、『バジュラ本星突入作戦』に投入された緊急徴用の新人パイロットより十二分に戦力になりそうだった。 生徒の最後の1人が敵の猛追を受けて撃墜で終わり、さてどうするのだろう?と遠巻きに観察していると、ミシェルがこちらに来て言う。 「なのはちゃんもやってみる?」 「へ? わたし?」 ミシェルの突然の誘いに、彼女を尊敬しているという女子生徒にアドバイスをしていたなのははキョトンとする。 「そう。滅多にやれないと思うよ」 この誘いにしばし迷っていた彼女だが、周囲の期待のこもった空気にのせられ、承諾した。 「あ、でもわたしEXギアがないから出来ないんじゃ―――――」 「大丈夫。こっちで用意するよ。なのはちゃんのデバイス・・・・・・そう、レイジングハートをちょっと貸して」 言われたなのはは胸元にある赤い水晶のような石、レイジングハートをミシェルに手渡す。 彼はそれを端末に置くと、パネルを操作していく。 「・・・・・・ああ、『三重(トリ)フラクタル式圧縮法』か。ずいぶん洒落たの使ってるね。・・・・・・それに最終形態時の常時魔力消費(バリアジャケットや各種装備を維持するのに必要な魔力)率が15%って結構無茶するね・・・・・・」 なのははミシェルの一連のセリフに驚いたようだった。 「そんなにすごいことなのか?」 なのははアルトの問いに頷くと、理由を説明した。 『三重フラクタル式圧縮法』を使えば、普通のデバイス用プログラム言語の約3分の1の容量で同じことができる。しかし通常のデバイスマスターでは扱えないし、それであることすら看破できない代物であった。 しかしミシェルはそれを斜め読みしただけで解読しているようだったからだ。 「ミシェル君にはわかるの?」 「まぁね。姫にもわかるはずだぞ」 「はぁ?ミシェル、俺はガッコ(学校)で習ったプログラム言語しか知らん―――――」 「じゃあ見てみろよ。ほれ」 ミシェルは開いていたホロディスプレイの端をこちらに向かって〝ツン〟と指で突き放す。 (仕方ないな・・・・・・) 俺はスライドしてきたホロディスプレイを手で掴んで止め、投げやりに黙読を始めた。 もし現代のプログラマーがパッと見ることがあれば、見た目数字とアルファベットがランダムに配置されていて、なにか特殊な機械語だと思うかもしれない。 しかしアルトにはすぐに見当がついた。中学生時代、人類が生み出したC言語などを全て極めた後でようやく習ったプログラム言語――――― アルトは猛然とミシェルに駆け寄ると、画面を指差して叫んだ。 「おい!こいつは紛れも無く〝OTM(オーバー・テクノロジー・オブ・マクロス)〟じゃねぇか!?」 そう、これはOT(オーバー・テクノロジー)を有機的に運用するのに最適化されたSDF-01マクロス由来のプログラム言語だった。 「ああ。そうだな。わかるっていったろ?」 「だが何で―――――!」 こいつらがこれを知っている?というセリフを直前で飲み込むアルトだが、ミシェルは 「さぁな」 と肩をすくめて見せただけだった。 そして彼は顔にハテナを浮かべる生徒やなのはを見て当初の目的を思い出したのか端末に操作を加え始めた。 「えーと・・・・・・ここを繋いで・・・・・・これをペーストして・・・・・・第125項を第39項で繰り返す・・・・・・よし、これでIFS(最初にバリアジャケットのイメージデータを作成するシステム)に繋がるはずだ。これからバリアジャケットのイメージデータを送るから、待機してもらってて」 ミシェルは自身の端末を操作しながら、なのはに指示を出す。 「わかった。レイジングハート、お願い」 『Yes,My master. IFS(Image・Feedback・System) connecting ・・・・・・complete. All the time.(はい、マスター。IFSに接続中・・・・・・完了。いつでもどうぞ)』 「じゃあ、始めるよ」 ミシェルは言うが、変化はほとんどない。レイジングハートが数度瞬いたぐらいだ。そして不意に端末を畳むと、レイジングハートをなのはに返した。 「終わったよ。着替えてみて」 なのはは頷くと、その手に握る宝石に願った。 アルトは手で隠すように眩い桜色の光を避ける。するとそこから光臨してきたのは、いつもの白いバリアジャケットではなく、EXギアを着たなのはの姿であった。 しかし――――― 「これが・・・・・・うわっ」 予想以上の動きに大きくふらふらする。そしてバランスをとろうとして動かすとさらにバランスを崩し―――――と事態をどんどん悪化させていく。 「動かないで」 ミシェルが落ち着いた声でそう彼女に釘を刺すと、応援に来たアルトと共にそれを制していった。人間焦った時動かす場所など決まっているものだ。アルトやミシェルのような熟練者であればEXギアを生身でも制止することは可能だった。 「ふぅ・・・・・・トレース(真似)する動きは最低の1.2倍になってるけど、動く時には気をつけて。もし危ないと思ったら体は動かさず、いっぺん止まること。バランサーのおかげでどんな姿勢でも転倒することはないし、なのはちゃんが動かなきゃコイツは動けないから。OK?」 「う、うん・・・・・・」 彼女は素直に従い、ミシェルにエスコートされながらゆっくりシュミレーターに乗り込む。そして簡単な操縦機器の説明を受けるとシュミレーターを稼動させた。 『わぁーすごい!』 なのはの邪気のない声がスピーカーから届く。 たとえその身1つで飛べるとしても、やはり飛行機のパイロットの席に座る感触はまた格別である。 アルトもEXギアで飛ぶのと同じかそれ以上にバルキリーで飛ぶことを楽しんでいるので、なのはの気持ちはよくわかった。 「それじゃなのはちゃん、操縦の説明は―――――いらないみたいだね」 ミシェルはそう言うと、曲芸飛行をはじめたVF-0を見やった。 縦宙返りをして頂点に来るや360度ロール。再びループを継続すると、元いた場所に戻る。 そしてそこで鋭くターンすると、先ほどループした中心を貫いた。 その航跡が〝ハートを貫く矢〟に見えたのはアルトだけではあるまい。 なのははこの短時間でVF-0を乗りこなしたようだ。 その後も捻り込み、コブラなど曲芸を披露していった。 『うん、いい機体!』 なのはは水平飛行しながら足のペダルに直結された可変ノズルを操作して機体を揺すった。 「なのはちゃん、十分出来そうだね」 『うん。戦闘機の空戦機動ならみっちり〝練習〟したから』 それを聞いたミシェルがニヤリと微笑む。 「それじゃうちの生徒と同じ難度でやってみる?」 『うん!お願い!でも邪魔だからコンピューター補助全部切ってマニュアルにして』 「え?でもそれじゃ機体制御が難しくなるし、限界性能が出ちゃうからG(重力加速度)で気絶しちゃうかもしれないよ?」 しかしなのははカメラ目線になると、ウィンク。 『お願い』 と繰り返した。 「・・・・・・わかったよ。それじゃ、お手並み拝見」 ミシェルは肩をすくめて言うと機体の設定をいじり、訓練プログラムを作動させた。 出現するガジェットの大編隊。 なのはの操縦するVF-0はファイターで単身敵に向かっていく。その間チャフ(レーダー撹乱幕)とフレアを連続発射してあらかじめロックをかわす。 そしてすれ違った時には敵のうち数機が破片になっていた。 『〝LOMAC(LOCK ON MODERN AIR COMBAT。第97管理外世界に存在するフライトシュミレーション)〟で培った私の技術、今ここに見参!』 神技であった。 突然ピッチアップしたかと思えばそのまま後転。機首を元来た方に向けると、敵をマルチロック。続いてマイクロミサイルを斉射し、まったく回避動作に入っていなかったガジェット数機を葬った。 続いて追ってきたガジェットになのはは機首を上にしてスラストレバー(エンジン出力調整レバー)を絞る。すると機体は失速するが、なのははそこから可変ノズルを不規則に振ってハチャメチャにキリモミ落下を始めた。 これに似た機動は第97管理外世界ではフランカーシリーズの最新鋭戦闘機だけができる曲芸だが、VF-0でも潜在能力として出来た。 また可変ノズルなどの機構やOTM、そして操縦の完全マニュアル化によってそれら戦闘機より鋭く、速く行え、この機動中も制御が利くので、複雑な軌道なため狙いがつけられず棒立ちのガジェットを次々ほふっていった。 開始1分でガジェットを10機以上葬ったなのはのVF-0はその後もファイターしか使わない。いや、EXギアシステムが満足に使えないため、それをトレースするバトロイド、ガウォークなど使えない。 そのため遂にはミサイル、弾薬が尽き、戦闘空域から離脱する前に無限に出てくる敵の損害覚悟の包囲攻撃にさらされた。 「まだまだ!」 なのはは機体を180度ロール。続いて主観的な上昇をかけて急降下。いわゆる『スプリットS』を実行し、下界のビル群に突入した。 ガジェットも彼女を追わんとそこへの突入を敢行する。 「さぁ、どこまで着いてこられるかな!」 彼女は乱立するビルの間を音速で飛翔する。 本当にやったらビルのガラスが割れてその中の人や道路を歩いている人が大変なことになるが、なのははまったく気にしていないようだ。 秒速数百メートル単位で迫るビルという名の障害物を絶妙な機動で縫っていくなのは。 そんな魔のチキンレースにガジェットは更に10機ほどがビルにぶつかって散った。 しかし目前のビル群がとうせんぼ。正に袋のネズミになってしまったなのはに上空待機していたガジェットが大量に急降下を仕掛けてきた。 万策尽きたらしい彼女はスラストレバー全開で敵に特攻。数機を相討ちにするが、自らは激突寸前にイジェクト(脱出)して生き延びるという狡猾さを見せた。 「ふぇ~、やっぱり難しいよ~ぅ」 などと〝可愛く〟言いながらシュミレーターから出てくる。しかしこの20分で築き上げた撃墜数は1期生を余裕で上回る62機を叩き出していた。ちなみにこれには、ビルに激突して散った機は含まれていない。 おそらく実戦なら脱出後、生身でさらに80機近くを落とすだろう。 (さすがは管理局の白い悪魔・・・・・・) この時全ての人が同じ思いを共有していたという。 (*) 「さて、アルト姫。ここで生徒達にお手本を見せてくれるかな?」 なのはの奮戦を見て血のたぎっていたアルトはすぐさま応じ、メサイアを着込む。そしてシュミレーターから降りたなのはの、 「頑張って!」 と言うエールを背中に受けながらシュミレーターに乗り込んだ。 ハッチが閉じ、コックピットの機器に光が灯っていく。 操縦系統はEX(エクステンダー)ギアシステムを採用したためかVF-25と相違ない。アルトは自らの技量を過信するわけではないが、いくら旧式VF-0のスペックでも、ガジェットごときに落とされるとは思えなかった。 (*) シュミレーター外 なのははミシェルがシュミレーターのコントロールパネルに操作を加えるのを見逃さなかった。 「ミシェル君、なにをしたの?」 なのははそう言いつつミシェルが操作していたコントロールパネルの『難易度調整』と書かれたダイヤルを見た。ダイヤルのメーターはMAX(最大)を示している。 「普通の難易度じゃ、あいつにゃすぐクリアされちまうからな。あの高慢チキな鼻っ柱をへし折るにはこれぐらいで丁度いいんだよ」 その難易度はなのはや生徒達よりも8段階以上、上の設定だ。なのははシュミレーターの前で静かに合掌した。 (*) 「おいおい、ミシェル!これはなんなんだぁぁぁ!?」 アルトは迫るHMM(ハイ・マニューバ・ミサイル)をチャフ、フレアに機動を織り交ぜて必死に回避し、EXギア『メサイア』とシュミレーターの発生する擬似的なGに喘ぎながら通信機に怒鳴る。 後方にはライトブルーの機体が3機。機種はアルト達の世界でも最新鋭の無人戦闘機QF4000/AIF-7F「ゴースト」だ。 このゴーストは現在、新・統合軍の主力無人戦闘機だ。 有人機と対決した場合、高コスト機体であるAVF型(VF-19やVF-22)であっても1対5のキルレシオ(つまり、ゴーストが1機落とされる間に5機のAVFが撃墜されているということ)を誇り、VF-25で初めてタメが張れるという恐ろしい機体だった。 『あれ?生徒達の前で恥をかくのかな?』 それだけ言って通信は切られた。 「くっそ!覚えてろよミシェル!うおぉぉーーー!!」 アルトは持てる技術を総動員し、旧式VF-0で現役ゴーストに挑んだ。 (*) ゴーストは宇宙空間や大気圏でのいわゆる〝空中戦〟に特化しているため、このまま敵のフィールドである空中にいたらタコ殴りになると急降下。 1機を市街地のビル群に誘い込み、バルキリーの最大の特徴であり、得意であるバトロイドやガウォークなどで市街地機動戦を展開。罠にはめてガンポッドで見事撃墜した。 しかし残る2機にミサイルを雨あられと降らされ、袋叩きに会うこととなった。 「なめんなぁ!」 アルトはアフターバーナーも全開に急上昇を掛ける。 それによって空間制圧的に放たれていたミサイル達は飢えた狂犬のように従来の軌道を捨て、そこに集中する。 それを見越していたアルトはその瞬間ガンポッド、ミサイルランチャーなど全装備をパージしてデコイ(囮)とし、その弾幕をなんとかくぐり抜けた。そして間髪入れずにバトロイドへと可変すると、目前にいたゴーストに殴りかかった。 PPBの輝きも無い無骨な拳は見事主翼を捕らえてそれを吹き飛ばし、軌道が不安定になったゴーストを残った腕で掴むと、主機(エンジン)と武器を殴って全て停止させ、ミサイルランチャーからミサイルを1発拝借した。 もはや翼を文字通りもがれて鉄くずとなったゴーストだが、まだ利用価値がある。 バトロイドとなったことで急速に遅くなったVF-0に、残った最後のゴーストが接近掛けつつミサイルを放ってくる。その数、10以上。 そこでアルトは鉄くず同然のゴーストをミサイルに向かって投げつける。そして腕のみを展開したファイターに可変したVF-0は最加速して投げたゴーストに追いつくと、手に握っていたミサイルをそのゴーストに投げつけた。 直後に襲う衝撃。 ミサイルとゴーストの誘爆で大量の熱量と破片、そして衝撃波が放たれる。そして向かってきていたミサイル達はその目的を果たす前に、VF-0に重なるように出現した熱源に誘われて破片にぶつかったり、爆風の乱流で他のミサイルにぶつかったりとそれぞれの理由で自爆した。 その代償はVF-0にも降りかかる。VF-25であればファイターでも転換装甲が使えるため何とかなったはずの破片だが、スペックが完全に古いままらしいVF-0には多数の破片が弾丸となって機体を襲う。 主翼を半分ほど持って行かれ、腕は両方とも寸断され、可変機構にも深刻なダメージを与えられ、エンジンはガタが来ていた。 しかしVF-0はまだ飛んでいた。そしてアルトの瞳も最後のゴーストを捉えて離さなかった。 数々の損害を代償にミサイルの回避と莫大な推力を貰ったVF-0は一瞬にしてゴーストの前に躍り出た。 発砲されるレーザーの嵐。 通常なら回避する攻撃だ。しかしこのエンジンの様子だともはや攻撃はラストチャンスであり、残された攻撃方法も特攻以外に残されていなかった。 コックピットへと飛び込んできた無数のレーザーに全身が焼けるように熱くなって感覚が失せる。だがアルトの突入への気迫が勝った。 「終わりだぁーーーーー!!」 VF-0は迷わず特攻を敢行。その1機を相打ちにした。 「はぁ、はぁ、はぁ・・・・・・」 アルトはブラックアウトしたシュミレーターの全天画面の下、しばし休憩する。 全身がジンジン痛むが、体はなんとも無いし、徐々に収まる。どうやら被弾の痛みはEXギアの仕業のようだ。脳に直接信号を送り込んで激痛を走らせているらしかった。 それにメサイアの生み出す擬似的な重力加速度やシュミレーターのハイレベルな完成度からまさに真剣にやったため、たった5分の戦闘での疲労はフルマラソンに3~4回連続出場したレベルにまでアルトを追い詰めていた。 そうして満身創痍でシュミレーターを降りた彼を迎えたのは『ミンチ・キロ100円』や『I m dead』等と書かれたプラカードを持ったミシェルではなく、生徒やなのは達の満場の拍手だった。 「さすが〝アルト〟だ。俺でも2機しか落とせなかったのに」 ミシェルが正確に名を呼んだこと。それがアルトに対する最大級の賛辞を表していた。 (*) その後場所を普通の部屋に移し、講義が行われた。教壇で筆をとっているのはあのウィランだ。 内容としては比較的普通のことを教えている。バルキリーで使われるOT・OTMの基礎理論を普通と呼ぶことができればだが。 「―――――従来型の翼で空力制御し、上向きの力を得るやり方と、OTによって力を得る方法がある。工藤、主に何の力があるか言ってみろ」 ウィランの指名にただ1人の女子生徒、工藤さくらが立ち上がって答える。 「は、はい!〝摩擦〟〝圧力〟〝誘導〟の3種類です」 「では従来の揚力方程式にOT加えるとどう置き換えればいいか?」 続くヴィランの詰問にさくらは 「抗力係数をClから・・・・・・」 と従来の式の係数はスラスラ出たが、それを加えるとどうなるかを忘れたのか、大慌てでプリントをペラペラめくる。 「えぇーと・・・・・・Cdに置き換えればいいはずです」 ウィランはよろしいといって彼女を席に着かせ、講義を再開した。 アルトには自明のことだが、なのははためすすがめつしながら複雑な計算式の書かれたプリントとホワイトボードに書かれた計算式を見比べ、しきりに顔を捻る。 なのはは見たところ理系に近いが、1期生達のような工学系大学出身でも手間取るのに、彼女のような中卒でOTやOTMを理解しろというのも無理な話だろう。 ちなみに第1管理世界の教育は短期集中で、大学でも15歳で卒業できた。 (*) 90分の講義が終わり、アルトが時計を見るとすでに16時を回っていた。 ロングアーチに技研に行く旨は伝えてあるが、報告書の提出など帰ればやることはたくさんある。 「なのは、そろそろ―――――」 「そうだね」 なのはが頷く。 現在教室は休憩時間に入っており、生徒のほとんどが机に突っ伏して静かに寝息を立てている。 「それじゃさくらちゃん、頑張ってね」 「はい。ありがとうございます」 唯一の女子生徒、工藤さくらが笑顔でなのは達に手を振ると、机に吸い寄せられるように横になり、数瞬後には 「くー・・・」 とイノセントな寝息をたて始めた。 生徒達はいつもハードスケジュールらしい。 アルトとなのはは顔を見合わせて笑うと、静かに教室を抜け出し、教員室に向かった。 (*) 「もう、お帰りに?」 ウィランが惜しそうに言う。 「はい。今日はお世話になりました」 「いえ、こちらこそ。また来てやってください。あいつらのいい刺激になるので」 「はい♪」 なのはが満面の笑み。間違いない、コイツはまた来る気だ。 アルトは頭を抱えたが、同時に彼に問おうと思っていたことを思い出した。 「ところでウィラン三佐、ギャラクシー所属だったそうですけど、どうやってここへ?」 アルトの問いに、机に向き合っていたウィランがコンピューターにワイヤード(接合)していたコネクターを外し、コードとともに〝耳の後ろ〟辺りに巻き戻した。それがあまりにも自然な動作だったためアルトですら一瞬気がつかなかった。 「え? アンドロイド?」 ミッドチルダではインプラント技術が進んでない(フロンティア同様、医療目的以外禁止されている)ため、なのはが目を白黒させる。 そんな彼女のセリフにウィランは一笑すると 「残念ながら全身義体じゃないよ。これはただの後付けの情報端末で、あとはナチュラルだ」 と簡単に説明した。そしてイスを引くと、アルト達に向き直る。 「・・・・・・それで本題だな。実はギャラクシーの急をフロンティアに伝えようと急ぎすぎたんだ。おかげで機体のフォールド機関が暴走してこの有り様だよ」 彼は肩を竦める。どうやらウィランも同じくフォールド事故で来ていたらしい。 「機体はどうなりました?」 「俺の乗っていた高速連絡挺は技研に差し押さえられてしまったよ。だが糞虫どもにやられてボロボロだし、連中の手には余る代物だからな。ほとんど解析出来なかったみたいだ。フロンティアの脱出挺が来てからは、OTの流出を最小限にして管理局を手伝おうと思ったんだが・・・・・・バレちゃったみたいだな。昨日、連中がいきなりフェニックスの変換装甲を作動させた時は驚いたぞ」 「いや、その、すいません・・・・・・」 どうやら技術の漏洩を黙認していたのはアルト達だけらしかった。 「まぁ起きてしまったことはもう仕方ない。おかげで量産のメドが立ったし、幸いここの連中はいいやつだ。OTを人殺しに使うようなことはないだろう」 ヴィランはそう言ってアルトの肩を叩いた。 その後フェニックスの整備に行っているというミシェルによろしくと言い残し、アルトとなのははフェニックスと一緒に陸路で搬入されたVF-25の待つ格納庫に向かった。 (*) 格納庫に着くと、知らせを受けたのか田所が待っていた。 「田所所長、お見送りですか。ありがとうございます」 なのはが一礼。 「いや、しっかり謝りたかったのだ。・・・・・・アルト君すまなかった、あの事を隠していて」 アルトはかぶりを振る。 「必死だった。どうしてもここの人々を守りたかった。そういうことなんだろ?」 田所が頷く。 「なら、恨みっこなしだ」 アルトは踵を返すとVF-25に向かう。しかし立ち止まり、背を向けたまま一言呟いた。 「俺も言い忘れてたけど、VF-25を―――――俺の恩人の形見を直してくれてサンキューな」 「うむ。いつでも来い。今度来たときにはその機体のかわいいエンジンをギンギンにチューンしてやる」 アルトは振り返り 「ああ」 と破顔一笑。そしてなのはを伴ってVF-25のコックピットに収まると、すっかり暗くなった夜空に飛翔していった。 ―――――――――― 次回予告 シェリルの元に届く知らせ。 それはアルト達の居場所を導く手がかりとなるものだった! そして決行される乾坤一擲の大作戦。その成否はいかに! 次回マクロスなのは、第9話『失踪』 「あたしの歌を、聞けぇぇー!」 ―――――――――― シレンヤ氏 第9話へ
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「ん……………」 身体が、動かない―――― 朦朧とする意識を取り戻し、肉体に思考の戻った彼女が初めて思った事がそれだった。 気だるげながら覚醒している意識と相反するように、体のパーツのどれをとっても彼女の思いのままになる箇所が無い。 まるで鎖に縛られているような、金縛りにあってしまったかのような感覚が彼女―――高町なのはを襲う。 (………………) かつてない激戦に苛まれた身体の疲労は凄まじく 自身の肉体が耐えられるダメージ量の限界を三段は超えていた。 起きてすぐ動けるはずがない。 「気がつきましたか……ナノハ」 後遺症が残る可能性―――最悪の事態が頭を過ぎる高町なのはに今、声をかける者がいた。 彼女は今、硬いベッドに寝かされ床に伏せている。 そこまで自分の意思で辿り着いた記憶はない。 そうだ―――そんな事も思考に入れられないほどに彼女は疲労していたのだ。 こちらを心配そうに見下ろす、恐らく自分をここまで運び、介抱してくれた金髪の少女。 「セイバーさん……」 そんな少女が名前を呼ばれ、ほっと一息ついていた。 「手当てしてくれたんだ…」 次いで自分に施された簡素ながらの治療、巻かれた包帯などに気づく。 「ありがとう……面倒かけちゃったね」 「礼には及びません。大した事はしていない。 鞘の回復が良いタイミングで行われたため、元より外傷はありませんでしたから」 アヴァロンの回復は凄まじいものだった。 体組織のほとんどが引き裂かれた再起不能レベルの傷をも蘇生させ 神経に痛みは残るも、骨や筋肉に後遺症が残る事はどうやら無いようだ。 「………ここはどこ?」 現在の状況を確認するなのは。 まだ記憶が混濁している―――― セイバーの語ったところによると、あの後、共に支えあいながら上空を飛び続けた両者であったが 疲労困憊で限界をとっくに超えていたなのはは、戦闘が確実に終了した事を認識した途端 力尽き、その意識を落としたのだという。 なのはという司令塔を失ったセイバーであったが、組み込まれていたレイジングハートのリカバリープログラムのおかげもあり ちぐはぐながらも何とか飛び続け、ここに着陸したというわけだ。 「的確な指示でした。彼女の助力がなければ二人して地面に落下していた事でしょう」 shanks 主人想いの杖に賞賛の言葉を送るセイバーである。 ここは―――山岳地帯。 ただでさえ人気の途絶えたこの世界にて更に人の寄り付きそうの無い秘境じみた景観。 相応の距離を飛んだセイバーはそこに、山師の使うような古びた小屋を見つけ なのはを寝かせるために降り立ち、今に至るというものだ。 こんな人里離れた場所に身体を休める小屋があった事も中に治療道具があった事も出来すぎなくらいの僥倖である。 素直にそれに甘え、ようやっと一息つけたセイバーとなのはであった。 「セイバーさん」 だが、そんな柔らかい空気を否定するかのように―――魔導士は固い声でセイバーに問う。 「どうしましたか? ナノハ」 「…………」 一呼吸、じっくりと一呼吸置いてから―――― 「勝ったの? 私達」 ―――――その問いを口に出していた。 ―――――― 「…………」 「…………」 部屋を沈黙が支配する。 「……………その問いには答えたはずです、ナノハ。 私達の勝ちだと」 「そう、じゃあ質問の仕方が悪かったのかも知れないね。」 やがてゆっくりと口を開いたセイバーに対し、 なのはは黒真珠のような光を放つ目を眼前の騎士に真っ直ぐに向ける。 「私達……………本当にあの人を倒したの?」 「―――――何故そのような事を?」 「うん。一応、確認」 「心配をする必要はありません。 体に障ります。」 その某かの核心を突くような問いかけに―――言葉を濁す騎士。 「あれほどの墜落に巻き込まれたのです。 普通に考えれば無事に済む確率の方が遥かに―――」 「セイバーさん」 歯切れの悪いセイバーを前にして、高町なのはは断固引く気は無い。 彼女の双眸が正面からセイバーを射抜く。 その真っ直ぐな瞳はあらゆる虚偽やはぐらかしを見抜く鷹の目のよう。 (……………) ――――フゥ、と……… 防戦に徹しようとしたセイバーが、その無駄を悟り溜息を一つ。 そして程なく白旗を揚げる。 「アレで大人しくなってくれるような輩なら私も苦労はしていません。」 「……………だよね」 騎士の言葉の意図する所は明らかだ。 十分な答えを得て、なのはは再びベッドに体を横たえた。 最後のあの空で確認をした時からセイバーには分かっていたのだ。 サーヴァントであるが故に――― あの爆炎の中、男の強大な気配が微塵も消えていない事に。 その事実―――倒してなどいない…… まだ何も終わっていないのだという事を。 「しかし何故分かったのです? 最後の一撃は快心の手応えだった。 あの一刀―――相手を打破した事に疑いの余地は無いはず……」 「全然快心じゃないよ。あんなの逃げながら手を振り回してただけ」 試すようなセイバーの問いかけに真っ直ぐに自分の意見を示す戦技教導官である。 「あんなに強い人を倒そうっていうのに気持ちの乗らない攻撃を何発振るったって届くわけが無い。 初めから、撤退しながらの攻撃が通用する相手じゃないのは分かってた。 あの局面じゃ良くて相手を押し返すのが精一杯……そう思っただけだよ」 「………」 「セイバーさんは……」 「え?」 騎士の顔を見ず、天井に視線を彷徨わせながら なのはは躊躇いがちに少女に声をかける。 「もう一度、あの人と戦うの?」 「―――はい」 ――――――即答だった。 「この身は再び、あの男と雌雄を決する事になるでしょう。 それは決して覆せぬ運命のようなものですから。」 瞳に強い意思を込めて、騎士は臆する事無く答える。 あの恐ろしい敵と再び相見える事を――― 天井を見据えていた高町なのはの瞳が揺れる。 「…………死んじゃうよ。あんな人を相手に……ん、」 躊躇いがちに紡がれたその言葉。 止められるものなら止めたい……それは魔導士の偽らざる本心だったが そんな彼女の言葉を遮るように、なのはの口に人差し指が当てられた。 「それ以上言うと、また喧嘩をしなければなりません。」 苦笑混じりにピシャリと、はっきりとその言葉を切り捨てた騎士。 あの男との闘いは聖杯戦争を勝ち抜く上で、決して避ける事の出来ない戦いだ。 なのはとて分かってる。 両者の間に紡がれた並々ならぬ宿業。その感情。 自分の言葉などでは―――到底、止められる域には無い事に。 (…………) しかして、このやるせない気持ちはどうしようもない…… 少女を見ないように寝返りをうち、口を閉ざしてしまう魔導士である。 再び、山小屋を支配する沈黙―――― その中において………… 騎士はいずれ来るであろう、その宿命の戦いに想いを馳せる。 あの強大な王と向かい合う自分の姿を幻視しながら―――――― ―――――― 地平に消えていくその姿――――― 籠の中に囲った鳥が檻を食い破り、空に飛び立っていった…… その様を――――――男は無言で見つめていた。 燃え盛る炎の中、悠々と歩を進め、荒野の只中に立つ黄金の肢体。 「―――ススで汚れた」 その一言。現状の不快感に対する率直な感想を述べていた。 遥か彼方を飛び退るセイバーと魔導士。 あの距離では新たな宝具を展開したとて、もはや影すら掴めまい。 「セイバー」 使用した全ての宝具が男の宝物庫に還っていく 大破したヴィマーナの残骸。 撃ち尽くす寸前だった英雄王の無尽蔵の宝具たち。 これだけの戦力を投入した事などいつ以来であろうか? しかもそこまでして成果が全く芳しくなかったというのだから男の苛立ちは想像に難くない。 「もし次に相対せし時、その輝きが色褪せたままであったなら――― それはお前を見初めた我の見込み違いであったという事。」 遠ざかっていく背中。 金色の髪の少女に向けて真紅の瞳に暗い陰を落としながら――― 「その時は我自らの手で唾棄してくれよう。」 ――――男は言い放つ。 自身が見初め、認めたモノが醜悪なイロに染まる事など在ってはならない。 そのような事―――この万物を支配する原初の王が許せるわけが無い。 「―――――」 次―――――そうだ。 次といえば……… ――― 次は勝とう ――― あの端女――――高町なのはの言葉が耳について離れない。 結局、最後の最後までセイバーとの逢瀬を邪魔してきたあの女。 市井の身でありながら、あの剣の英霊を御し従えるかのような様相も気に食わないし 男の誅殺から逃れ、無礼な発言の数々を償わせられなかったのも口惜しい。 だが、そうだ……認めねばなるまい。 もし、この邂逅が騎士王との一騎打ちであったならば 自分は間違いなくセイバーを陥落せしめていた筈だ。 ならばそれが叶わなかった原因は……もはや語るまでも無いだろう。 あの女の存在が――――覆した…… 決まっていた事象を―――塗り替えたのだ…… ―――――― 「―――言葉には言霊が宿る」 その場凌ぎの言葉だったにせよ「次」と口に出してしまったのならば それが何らかの力を持つ事もあるだろう。 またいつか、あの女は自分の前に現れるかも知れない。 何故かそんな気がする。 ならばその時こそ――― 「最低でも三日は生かさず殺さず―――苦痛と悲鳴を極限まで搾り出し……」 認めてやろう。 自分が手ずから引き裂く価値のある存在と認めた上で 阿鼻叫喚の苦痛と絶望を絡めて―――― 「その後、生きたまま心身ともに刻んで地獄の狗にたらふく食わせてやろう」 処断してくれよう。 どうして生まれてきてしまったのか――― そう後悔するほどの裁可をその身に下しながらに。 男の瞳に残忍な光が灯る。 あの女はこの英雄王を怒らせてしまった。 もはや安らかで幸福に満ちた最期を迎える事はないであろう。 ―――――― 正直、今回の醜態は流石のギルガメッシュにも落胆はあった。 だがその憤りを言葉にして吐露するのも詮無い事だ。 そろそろ常の王の顔を取り戻さねばならない。 いつまでも情念に囚われ、安い感情を暴露したままではいけない。 何せ――――見ているモノがいるのだから……… この身をこそこそと下卑た視線で覗き見ている輩がいる。 初めから気づいていた。 この歪な世界。この作られた矮小な箱庭。 そんなモノを支配して愉悦に浸っている愚かな痩せ犬の存在に。 「―――――ハ、」 英雄王が空を見やる。 その何も無い虚空に目を向ける。 日が昇り始め、燦々とした空気が男の肌を撫でる中―――やおらその宝物庫から一振りの剣。 乖離剣エアを取り出して何もない空へと向けた。 「―――――我がそこに辿り着くまでだ。 それまで精精愉しむが良い。」 そして一言………男は彼らに対して確かなる言葉を放つ。 全てを掴む男であるが故に神にすら宣戦布告するのが男の在り方。 世界を切り裂く剣を虚空の誰かに向けながら――― イレギュラー、英雄王ギルガメッシュは今、セカイに宣戦布告をし―――― そのまま何処かへと去っていった。 金色の残光を、王の威光を存分に場に遺して……… ―――――― 「……どうするの? これから」 「…………」 なのはが騎士に背中を向けたまま、その問いを口にした。 一息ついたその後はどうするのか? なのはの問いに沈黙を以って答えるセイバー。 どうするか、などと――――答えは決まっていた。 セイバーには為さねばならぬ事がある。 当然なのはにも。 互いに未知なる世界に放り込まれた身だ。 一刻も早く己がマスター、仲間と合流して今後の対策を練らなければならない。 本来ならばここで悠長にしていられる時間すら惜しいのだ。 そして互いに進む道が違う以上……自ずと結論は出るのだ。 「当ては無いんでしょう? 行き先や方針が定まらない以上、一緒に行動した方が絶対にいいと思う。」 だが後ろ目で控えがちに少女の顔を見ながら、魔導士は少女に共に行く事を進言する。 「安全面や行動範囲の面から言っても…… ここで別れるよりはもう少し様子を見た方が絶対に、」 「ナノハ」 それは正論にかこつけた心情的な吐露だった。 心配だった……この騎士が。 揺るがぬ意思と強さを持っている筈の騎士王。 その背中が何故か酷く危うく儚い―――そう、なのはには感じられたのだ。 「―――事を為した暁には貴方に紹介したい人物がいます」 そんな秘めた感情を胸に、騎士との同行を求める高町なのはに対し セイバーは――――唐突にその話を切り出した。 「私に?」 「ええ。彼は私のマスターというべき存在。 自分の正しいと思う事を貫き通す強い心を持った好もしい人物です。 きっと貴方とも良い友達になれる事でしょう。」 「えっと……ん、…別にそれは良いけど。」 突然の申し出にキョトンとするなのは。 それを見て、フフ…とイタズラ気に笑うセイバー。 こうしていると二人とも年頃の女の子にしか見えないのが微笑ましい。 「あ――――」 しかしながら―――そのセイバーの微笑が今、突如崩れ、奇妙な表情になる。 自分で切り出しておきながら間の抜けた声を上げる剣の英霊。 「??」 首をかしげるなのは。 迂闊……………… この少女にして我ながら重要極まりない事を失念していた。 騎士の挙動不審な顔を無言で覗き込む高町なのはである。 「いや、その……………こちらから切り出しておいて何ですが 果たして貴方と彼を合わせても良いものか……」 「? どうして?」 「想像を絶するほどの―――――――無茶をやらかすので……彼は。」 ……… こちらと目を合わそうとせずに、しどろもどろになりながら答える少女。 なのはの目が丸くなる。 ビルの屋上で言い合いになった時の事を思い出したのだろう。 この魔導士が命を粗末に扱う無謀な行為を決して許さないという性格ならば 自分の命を採算に入れずに行動する人間を見て、果たしてどういう反応をするか――想像に難くない。 「………うーん」 上目使いにこちらの様子を見てくる少女に対し、やや苦笑いのなのはである。 「セイバーさんが10だとするとどれくらい?」 「貴方を10として測定不能です」 「………………」 迷い無く言い放つセイバー。 控え目な彼女がここまで言うのだ。 それはもう……相当なレベルと見て間違いない。 「うん。何となく分かったよ…」 この騎士のマスターである。 失礼な事はあまりしたくないが…… そこまで無茶苦茶な事をする人物とあらば放ってはおけない。 この騎士の許しが得られるのならば――― 「じゃあ是非とも会ってお話しないとね。」 「お手柔らかに。」 ―――職業柄、少しお節介をするのも吝かじゃない。 と、悪戯っぽく笑うなのはである。 「でもいいの? セイバーさんのマスターなんでしょう? 自分で言うのもなんだけど私は厳しいよ?」 「甘く見ないで欲しい!」 「へっ!?」 そこでガバっと詰め寄ってくるセイバーに心底驚くなのはさん。 物静かな騎士がこんな顔をするなんてまるで予想だにしなかった。 「その厳しい貴方でも矯正しようが無いほどのレベルです! 言葉はおろか相応の体罰を以ってしても――実際に死にかけても改善しない筋金入りの難物なのです! ですからもし教鞭を振るうのでしたら、死なない程度にお手柔らかに!」 拳を握って捲くし立てるように次々と言葉を放ってくるセイバーに防戦一方の教導官。 「全く今回、ナノハと共に戦えて久しぶりに気兼ねの無い連携戦を堪能出来た…… いつ以来でしょうね……こんな開放感は。 パートナーの身を気にせず戦えるというのがこれ程に有意義な物であったとは…… ナノハと引き合わせた際にシロウ―――マスターには貴方の爪の垢をそのまま飲んで貰わなければ。」 (う、うわぁ……) なのはの目は終始、見開きっぱなしだ。 クソミソである。まさかこの少女がここまで人の事をコキ下ろすとは…… 眉をハの字にして腕を組み、う~…と唸りながらにそのマスターを罵倒する騎士。 その姿に唖然としっ放しの魔導士であった。 (………………………でも、何か) だが、そう―――― 聞き手役に徹しながら、知らず自身の口に笑みがこぼれてしまっている事に気づくなのは。 否、魔道士でなくとも……気づく筈だ。 顔をしかめながらぶつぶつと文句を言い続ける少女。 その声色が――――とても暖かい。 こんなに優しく温かい思いを込めて話されてしまっては誰だって気づいてしまう。 そのマスターという人が、この少女にとってどういう存在なのか。 まるでこの世で一番大切にしているものに触れている――― そんな幸せで嬉し気な気持ちが滲み出てきているようで その表情が本当に綺麗で……話を聞きながら少し見とれてしまうなのは。 本当に綺麗だったのだ――瑞々しくて、幸福に満ち溢れていて。 それは自分に似ていると思っていた騎士の、自分には無い一面。 なのはには知る由も無い。未だ自分の中に芽生えた事の無い想い――― それは一人の異性をただひたすらに愛する、という事。 狂おしいほどにその相手一人を求め、己の全てを捧げたいと思う事。 既存の理想と秤にかけてさえ、その者を想う心が勝ってしまう。 この少女をして「己が願いよりもシロウが欲しい」と――そう言わせてしまう程の、 ――― 恋焦がれるという事 ――― ―――――― 自分にはいるのだろうか――― その表情を眺めながらに高町なのはは思った。 頭に浮かべるだけでここまで幸せな気分になれる――そんな人が。 (ユーノくん? フェイトちゃん?) 子供の頃から助け合い、自分を支えてくれた とても大切で、いなくなる事なんて考えられない友達。 (はやてちゃん? ヴィータちゃんやヴォルケンリッターの皆?) いずれもかけがえの無い仲間。 この人たち無くして今の自分は無い。 (スバル? ティアナ? エリオ? キャロ?) 自分の手がけた教え子たち。 自分を慕ってついて来てくれる可愛い後輩たち。 この子達がもし戦場で還らぬ事になったら自分は―――多分、泣くだろう。 (………………………ヴィヴィオ) あの子を助けるため――――自分は一度、公務の身でありながら私情を優先した。 あり得ない事だった。 頭の中がぐちゃぐちゃになって……自分の信ずる道も責任も二の次になってしまった。 もし次、同じ事が起こってヴィヴィオを助けるために周りを犠牲にしなければいけない時 自分は決して私情を優先しない事を心に固く誓っている。 でも――どうなのか…… 本当にそういう場面に直面したとして、自分は――― (…………私、は…) 「――――痛むのですか?」 「えっ!?」 別の事に思いを馳せていた所にセイバーに声をかけられ フリーズしていた高町なのはは咄嗟に反応出来なかった。 「あ………えと、うん…… 聞けば聞くほど無茶苦茶な人だよね、その人…… 腕がなるなぁ。ふふ」 「やはり疲れているようですね。 すみません……私の方が話に夢中になってしまって。」 「ううん、セイバーさんとお話しするのは楽しいよ。」 それはお世辞ではない。 この、どことなく自分に似ている騎士とのお喋りはなのはにとって新鮮で楽しかった。 セイバーにとっても同じ。 尊敬するマスターはいる。 主従を尽くしてくれた者もいた。 だが自分と全くの対等の位置に立って、あくまで同じ目線で、時にはケンカをして時には支え合う。 彼女にとっては初めての感覚であったのだろう……その―――友達、というものが。 他愛のない話をした 自分の事や友達の事を話した 色々な事を話した なのはも今や、目の前の少女が本当に現世の人間でない事――― 何か超常の存在である事は理解している。 だがその事は―――また、今度ゆっくり聞こうと思った。 (…………) そろそろ体力の限界だ。 瞼が絶え間なく重くなる。 だからこの次――― 目を覚ました時にゆっくりと…… ―――――― 談話は長くは続かなかった。 高町なのはの肉体が再び強烈に休養を欲し、彼女に抗えぬほどの睡魔が訪れる。 「ごめん……少し、寝ていいかな?」 重くなる瞼をしばたかせる魔導士。 抵抗し難い睡魔に身を任せてしまう前に一言、セイバーに断りを入れる。 「ええ――お休みなさい。ナノハ」 「はは、流石に疲れてるみたい…… 起きたらまたお話聞かせて。」 「―――――、はい」 既に夢現に入っているかのような、小さくはっきりしない声で問答するなのはに微笑を返し 少女は彼女に毛布をかけて眠りを促す。 それに気持ち良さそうに身を委ね、目を閉じ、数刻を待たずして――― すぅ、すぅ、……と、まるで電源が切れたかのように寝息を立て始める高町なのは。 (無理も無い…) 現世の人間では願っても覗く事すら叶わぬ神代の激戦――― それに身を投じ、戦い抜き、生き抜いた。 硬い寝床に身を横たえる高町なのはを見やる少女。 本来、健康で血色の良い筈の顔が落ち窪み、心なしかやつれている。 そのか細い体には傍から見てもまるで生気が通ってない――まるで病人のようだった。 当たり前だ。 彼女はヒトの身でありながら一晩で英霊と二連戦したのだ。 まさに精魂尽き果てたのだろう。 疲労困憊の痛々しい姿をまともに正視出来ず、目を逸らしてしまうセイバー。 彼女にはもっともっと休息が必要だった。 額のタオルを絞って変えてやる。 そして魔導士が完全に寝入るのを見計らってから――― 「―――ナノハを頼みます」 Allright...Good luck brave knight 「ありがとう……」 床に置いてあるレイジングハートに彼女は別離の言葉を告げた。 自分と共に行くと言ってくれた彼女―――その優しさと気遣い。 だが、セイバーは絶対にそれを受けるわけにはいかない。承知するわけにはいかない。 彼女を同伴させるという事は自分の戦いに魔導士を巻き込むという事だ。 言うまでもなく此度の戦いに彼女を巻き込んだのは自分。 その挙句、高町なのはは負わなくても良い傷を負ってこうして地に伏せっている。 彼女を再びこんな目にあわせてしまう事などセイバーは絶対に了承出来ない。 聖杯戦争とは謂わば参加者各々の私闘。 その私事に関係の無い者を巻き込むなど騎士として恥すべき行為に他ならないのだから。 無防備な彼女を残して去る事には当然、危惧を抱くセイバーであるが このような山小屋では人の目につくかどうかも怪しいし彼女の敵に発見される確率は低いはずだ。 ケモノや魔獣が跋扈していたとしてもこの魔杖――レイジングハートが簡易結界を張って防ぎ、彼女を起こしてくれると言っている。 むしろ自分がここにいては逆効果なのだ。 他のサーヴァントにその身を感知されて襲撃される恐れがある。 そしてこんな状態では他のサーヴァントからなのはを護って戦うなど不可能―――今度こそ彼女を死なせる事になる。 「ふふ、このような気遣い…… 貴方に聞かせたらまた叱られてしまいますね」 それを素直に話した所でこの魔導士は納得すまい。 むしろそんな言い方をすれば逆に食いついてくる。 困ってる時はお互い様、とばかりに助力を申し出てくるはず。 こんな所は本当に――マスターに似ている。 だから――騎士は黙って出て行かざるを得ない。 「――――はぁ………」 ふらつく身体を引きずるように……騎士は山小屋の扉を開け放つ。 自分とてダメージが抜け切っているわけではない。その重い体を引きずるように――― セイバーはゆっくりと勝手口に向かい、その戸を開く。 一面に広がるのは岸壁と渓谷――――― 切り立った崖の下からは針葉樹林による緑の絨毯が広がっている。 苦笑する剣の英霊。 これは冬木の地に戻るのに相当手間がかかりそうだ。 小屋を後にする前に……騎士はもう一度、振り返る。 その部屋の奥。 深い眠りについている一人の魔術師。 否、魔導士に向かって一言―――― 「必ずまた会いましょう……タカマチナノハ。 この剣にかけて―――――――約束です。」 別れは言わない いずれまた再会しよう この素晴らしき友と その思いを胸に秘め―――― エースオブエースと騎士王の道はここで一先ず別れ、別の道を往く事になる。 本来、交わることの無かった二人の英雄の邂逅。 その物語は―――幕を閉じた。 だかしかし、それはこの世界で繰り広げられる事になるであろう 血で血を洗う壮絶な闘争劇の―――――序章に過ぎないのかも知れない。 ―――――― 無限の欲望の手によって起動した神々の遊戯版――― それが次の駒を選別すべく軋みを上げる――― 狂気の愉悦を称えたこの遊戯――― 次に舞台に上がるのは誰なのか…… カラカラと、まるでしゃれこうべの哂いのような音を立てながら起動する選別の祭壇。 その答えは誰にも…………知る由は無い。 ―――――― 「……………」 「……………」 そして時は今――――― 魔導士が騎士の少女と別れた山小屋にて。 「――――取りあえず話、長っ!」 血みどろのレクリエーションを終えた魔法使いが二人。 ズタボロの身体を横たえながらの情報交換の真っ最中であった。 「話を聞かせる気があるのアンタは!? 途中四回ほど眼を開けながら寝てました私スミマセン。」 「貴方が詳しく聞かせろって言ったから……」 「もっとよく考えて話作りなさい! そんなだから、ことごとく説得失敗するのよこのバカメっ。」 「……………」 「全く貴重な時間を無駄にした。 この話で分かった事と言えば貴方がその仕事に破滅的に向いてないって事くらいじゃないの…… ほら、バンザーイ! 早く薬塗って塗って!」 「言いたい放題……私だって必死だったんだよ…?」 かつてセイバーと心温まる話をした場所で それとは全く似ても似つかない、腹ただしい罵倒を飛ばしてくる魔法使い。 蒼崎青子の相手をさせられる高町なのはである。 「それでサーヴァント―――セイバーとはそれっきり?」 「うん……私が起きた時にはもう…」 「ふぅん」 微かに落胆の表情を浮かべる高町なのは。 彼女が再び目を覚ました時―――少女の姿はなく 自分と袂を分かってしまったと理解した時の寂しさは言葉では表せない。 やるせない記憶に苛まれるもその後、身体と魔力の回復を待ってこの山小屋を基点に付近を調査。 その最中に、どこぞの物騒なマジックガンナーにイチャモンをつけられたというわけだ。 (しかし英雄王に騎士王? ……どおりでキモが据わってるわけね。 ウチの世界の上位の神秘と既に一戦交えてたってワケか。) 話を聞くにつれ、内心で驚愕するミスブルー。 やはりこの娘、戦闘力に関しては予想を遥かに上回るレベルにあるという事だ。 「くっそー……こっちはズタボロなのにピンピンしやがってー! 私にやられた傷なんて蚊に刺されたようなもんってか!」 「こちらも相当こっ酷くやられてるよ……見れば分かるでしょう? ブラスターの後遺症も心配だし。」 青子の所持していた怪しげな処方器具の数々を巧みに操り 互いに互いの治療を施している最中の二人。 「姉貴のとこからガメてきた人形処方が役に立ったわ。 たまには役に立つのね、あのメガネも」 「ミッドチルダには無い凄い技術だよ……傷の塞がり方が尋常じゃない。 それもそちらの魔術の力なの?」 「まあね。たまに肉体変異とか起こってえらい事になるけど」 「は………?」 「いや何でもない」 既に自身の傷口に処置を施した教導官にとって聞き捨てならない呟きは どうやらその耳に入る事はなかったようだ。 「ところでもう一度確認するけど―――英霊と戦ったのね?貴方は。 一方的にやられたわけじゃなく、ちゃんと戦いになったわけね?」 「うん。でも互角の闘いだったとは思わない…… 地力では完全に上をいかれてた。」 「奴ら人間超えてるからね。根本的な部分で上をいかれるのは仕方がないわ。 でも――――攻撃は効いたのね?」 「うん。効きは薄かったと思うけど、確かにダメージは与えてたと思う。」 「…………………」 口元に手を当てて考え込む蒼崎青子。 (やっぱり、そういう事…?) 英霊に―――神秘に攻撃を通した。 サーヴァントの対魔力をブチ抜いたという事実。 「魔法」以外では、この世に現存するあらゆる魔術は騎士王の影を突破できないというのに。 同じ魔弾使いでありながら何故かこの相手の「魔法」を見た時、胸くそが悪くなった。 生理的嫌悪が先立ち、何が何でも否定してやりたくなった。 アナタのそれは魔法じゃないと。 そして今聞いた話を総計して……… 目の前の娘やその世界の住人の使う「魔法」とやらが青子の考えている通りのものだとしたら――― (水と、油……) それはどこまでも相反し、反発し合うモノであるのかも知れない。 表情には出さないミスブルー。 だが、あまり芳しくない仮説が立ってしまった事に―――心の底で焦燥を覚える。 「ときになのは―――貴方の所属する……その管、」 「時空管理局?」 「そう、それ。 アナタはその下で動いてるのよね?」 「うん。正式に勤務して結構長いよ」 「じゃあ今ここで起こってる事―――上に揚げるワケ? 英霊や、私の使った……魔法の事とか。」 それは何気ない質問だった。 少なくとも、なのはには他愛の無い質問に聞こえた。 その問いに隠された意味―――その声に微かに込められた危険な響きに―――なのはは気付くのが遅れた。 「そうなると思う。まだ上手く報告書に纏める自身ないけれど…」 故に気付けないままに対話した―――魔法使いに背中越しに答えた。 「正直、話が複雑で私一人の判断では動けない。 もし戻れたら一度、上の指示を仰がない、と…………ッ!」 突然、自身の心臓を背後から貫かれたかのような錯覚に襲われ――― 相手のたくし上げたシャツの下をまさぐって塗りたくっていた軟膏をその場で放り出し、勢い良く飛び退く教導官。 「――――――」 そのまま―――待機モードとなった己がデバイスを握り締め…… 緊張さながらに相手を見据える。 「――――どうしたのよ?」 「どういうつもり……?」 「何が?」 眼前にて向かい合う両者。 その常に称えた笑みを完全に消し去り――― 狼のような鋭い視線をこちらに向けてくるミスブルーに対し、なのはも冷徹なる戦意をぶつけて相対する。 「何かヘンな事言ったかな……私?」 「だから何がよ?」 「どうして……殺気をむけるの?」 「あらら何とも―――――――鋭いね、このコは。 時代劇で主役張れるわ。」 「はぐらかさないで」 ふざけている――そんな言い分は通用しない。 今、背中越しに感じた殺意は紛い様のない本気のものだった。 幾多の戦場を駆けてきた高町なのはがそれを読み間違える筈がない。 「青子さん」 厳しい視線を崩さない高町なのはに対し、青子はため息を一つ――― 「いや何ね……ちょっと愕然としたついでに アナタ、少しおつむが足りないんじゃないの?って思ったのよ。」 「意味が分からないよ」 「分からない? 本当に?」 くしゃ、っと頭を掻き毟るミスブルーである。 「………だから致命的なんだって言ってるの。まあ無理も無いんだけどね。」 なのはに対しての最後の言葉はもはや、ぼやきに近い。 「なのは。歴史のお勉強」 「………?」 「フロンティアを気取る余所者がネイティブに対してする行動。 仕打ちは場所、時代を問わず終始一貫している。 ―――――さて、どうするでしょう?」 「……………」 まるで自分を試すような青子の口調。 威圧されている感がどうしても抜けなくて、なのはの声も固くなってしまう。 「ひょとして……管理局の事を言っているの? 言っておくけど局は征服とか、無茶な武力介入はしないよ。ちゃんと相手の話は聞くし。 過ぎた力の暴走や破壊を止めるために介入はするけど、それは危険な力を抑止・保護するだけ。 必要以上の関与はその趣旨じゃない。」 「保護、ね。 じゃあ対象がその保護を拒んだらどうなるの?」 心の奥底まで覗き込んでくるようなミスブルーの視線にチリチリと全身が総毛立つ。 そんな感触に駆られつつも臆することなく答えるなのは。 「なるべく現地の人達との軋轢や摩擦を起こさないように対処するから 相手や付近に気づかれないように陰ながらに対応する、と思う。」 「ナルホド模範的な答えね。 ハネ返ったマヌケは気づかないうちにビーカーに入れられてるってワケ?」 「介入に対して断固とした姿勢を取ってくる人も中にはいるけれど 仮に戦闘になったとしてもギリギリまで相手を傷つけないよう留意する。 あくまで対象の保護が最優先だから……そのための非殺傷設定だよ。」 「―――――はぁ……」 ため息の連続だ。 本気で気が重くなるブルーである。 やはり根本的に世界が違う……何も分かっていない。 その「保護」という題目が――――まさにこちら側にとって死活問題だという事に。 恐らく目の前の純真無垢な娘はその保護とやらを嬉々として受け入れたのだろう。 そして組織の管理化に入り、平和のために力を与えられ……もとい、その力ごと飼われて尖兵として飛び回っている。 お国のために働く警察や公務員といえば聞こえは良いが、その力はとてもそんなかわいいものでは無い。 単純に自分が、そんな公務に勤しむような連中と相性が悪い事も相まる胸クソ悪さも手伝って―――どうしても尖った思考で見てしまうのだ。 (この目の前の、正義を本気で信じている娘のように……… 管理局とやらの「保護」を素直に受け入れる輩がこちらの世界にいる?) 断言する。そんな奴は一人もいないだろう。 神秘とは人の手の介入を許さないから神秘なのだ。 つまりはよく分からないモノだからこそ力を発揮する。 だが管理局――――ミッドチルダの力とやらは、それとは全くの真逆の存在。 発展に発展を重ねた科学技術。 それによって紡がれたプログラムにより術式を技術化・体系化して行使される力。 その技術は異次元間の航行や人体練成……つまりはこの世界における禁忌の領域。 「魔法」に匹敵する程にまで至っているのだ。 それほどの科学技術を持った相手に保護される。 そんなモノと、こちらの世界が混ざり合えば―――― 秘匿に秘匿を重ね、星に脈々と受け継がれてきた神性は………どうなる? (取りあえず私らは失業ね。 この地球に魔法使いは――――) ――――――――いなくなる……… 全てを白日の下に晒され、犯しつくされる事だろう。 その技術という名のメスによって。 どうだろうか―――そこまでの介入をされた以上、抑止は動くだろうか? 一応、表面上は平和的な営みである以上、アラヤもガイアも静観を決め込むだろうか? 協会とか教会とか、あそこら辺はこの第三者の介入を決して許しはすまいが。 どの道こんな風に力を巡っての異世界間の交流は、大概ロクな結果を生み出さない。 両者間に決して小さくない波紋、諍い、最悪の場合は全面戦争もあり得るだろう。 「………」 目の前の魔法少女の言う時空管理局という組織。 彼女の言葉が眉唾でないのなら、その規模・力は想像の範疇を超えている。 太陽系はおろか、地球圏以外に他の知的生物の存在すら認知していない地球人類の前に突如現れた 宇宙全域に広がる管理局という組織……まるでどこぞのSFだ。 目の前の娘の話だと管理局というのはそこまで物騒な集団ではないとの事だが 物騒な対応をしないのは相手が従順だからであって、もしそうでない場合は……? 徹底的に抗う姿勢を見せた相手に対し、その巨大な力を持つ組織がどういう対応に出るのか…? 彼らの目には、手段を問わず、ただ「頂」に至る事を第一とするこの世界の魔術師はどう映る? 法やら秩序やらを重視する者たちにとってむしろ物騒な存在はこちらではないか? 高町なのはは「魔法使いは大勢いる」と言った。 それはこのテの魔法使い―――似たような武装をした連中がごまんといるという事だ。 この高町なのはレベルの敵がわんさか攻めて来る事を考えると 「ぞっとしないわ……」 シャレにならない事態になる。 英霊と五分に戦う奴らが大挙して攻めてくるのだ。 もはや戦いにすらならないだろう。 (は、はは………何よコレ?) あらゆるifを想定し、考え尽くし――― げんなりしてしまう青子。 これではまるで小学生の頃に見た荒唐無稽なハリウッド映画と変わらないでは無いか? とにかくあまりにも相手の事が分からず、それに大して情報が少なすぎて想像すら出来ない。 事態は深刻な所まで進んでしまっているのか? ただの取り越し苦労なのか? ―――何も分からない…… (何だか重い話になってきちゃったわねぇ……) 額に皺を寄せ、深く考え込むブルー。 そして青子の動向を逐一見逃さぬよう、その表情を凝視するなのは。 エースオブエースの視線に晒されている事をまるで無視して、考え込んだかと思えば、ため息をつき 空気の凍るような表情を見せたと思えば、う~…といったダレ顔になる。 「青子さん?」 「考えてる……話しかけないで」 その百面相をまじまじと見ていたなのはが声をかけるが 決まりが悪そうに青子の方から、つい――、と目を逸らすのみ。 ガシカシと頭を掻く仕草があまりお行儀が良いとは言えない。 (完全に魔法使いの専門から大きく外れる事態になってきた。 イマイチ実感が沸かない……ジェダイの騎士とか呼んで来いっつうの。) そうだ。今の状況を簡単に言うと、それはファンタジーとSFが混ざり合うようなもの。 流石の魔法使いも全ての事態を的確に把握できるはずがない。 そもそも彼女は自分達の愛する世界を護りたい!というガラでも無い。 それはある意味、達観した有り様だっただろう。 超越した力を持つ人間が過度な思い入れで行動すれば、それはときに悪い結果に転がってしまう。 だからこそ浮世の事にはなるべく関与しないよう努めてきたのだが。 「――――――ま、いいや。」 だがそれでもこれだけ大きな事態に関わってしまった以上――スルーは出来ない。 「さて、これからどうしようか……当てはあるんでしょ?」 「いや、当てはこれから探すつもり。 引き続き調査待ちというところだけど……」 「どんくさい公務員ねぇ」 「…………放っといて」 自分は魔法使いなのだから―――そして目の前に魔法少女なんてモノまでいるのだから。 昔のような臭いノリで事に当たるのも悪くはないかも知れない。 「私も付いてったげる」 「え”?」 「………」 「………」 突然に切り出された同行の意―――― いつぞやの騎士に対し、自分が申し出たそれを今度は目の前の女性から自分が受ける事となった高町なのは。 それはあの時と同じで判断としては悪くない。 前後不覚の現状で一人よりは二人で行動した方が間違いなく安全であるからだ。 「………どうやら異世界の魔法使いは礼儀を知らないと見えるわね…」 「う、ううん! ち、違うの……そうじゃなくて。」 だというのに、一瞬表情が強張ってしまった高町なのはに対して こめかみをピクピクさせる青子さん。 流石の傲岸不遜なマジックガンナーも、厚意を向けた相手にあからさまにイヤそうな顔をされて深く傷ついたようだ。 「サーヴァントには一緒に行こうとか言って泣きついたんでしょうが? 心細いアナタのお守をしてやろうという私の親切心が分からない?」 「別に泣きついたわけじゃない……」 「じゃ、取りあえず―――」 「え? あの……」 目の前の長髪の魔法使いが簡素なTシャツをおもむろにたくし上げ その一糸纏わぬ姿をなのはの前に晒していた。 「さっきの続き続き♪」 「……………」 寝床にごろんと寝転がりながら床に落ちてる軟膏を指差して、カモン!と手招きするブルー。 目の前のスレンダーで無駄な肉の無い裸体を全く隠さずに。 (………………つ、疲れる人だ…) 誰とでもニュートラルに接する事が出来るのがこの教導官の美点であり長所だ。 だが、はっきり言って………ちょっと苦手な部類に入るかも知れない。 なのはにとってこの蒼崎青子という人物は。 (アリサちゃんを常時怒らせたようなものだと思えば我慢できなくもないかな……) 礼儀正しさの見本のような彼女であるが故に、ここまで無礼で無遠慮で 人の領域をドカドカ踏み荒らす人間を前にしてはやはり戸惑ってしまうのだろう。 珍しく他人に振り回されながら、塗り薬片手に暴虐ブルーに奉仕するエース。 対して青子の方は――――ぶつぶつ文句を言いながらも存外にも目の前の娘の事を気に入りだしていた。 まああくまでも……根性があって真面目でからかい甲斐のある「玩具」としてであったが。 まるで正義を純粋に信じていた学生時代の恥ずかしい自分を見ているようでSっ気が刺激され、ついイジりたくなってしまうという面もある。 同じような世界を生きていながら、昔、自分が置いてきたものを今もなお持ち続けている異世界の魔法使い。 旅のお供としてこれ以上の肴はない。 退屈しない道中になりそうだった。 「じゃあ塗るから。動かないでね」 「痛くしたらぶっ飛ばすわよ。 ああ、それとそのツインテールが腰に当たって気持ち悪い。 切りなさい。今すぐ」 「…………」 ――――――パンッ!!! 「きゃひィッ!!!???」 軽口をたたく患者の背中の傷口を思いっきり張るなのは。 青子がシメられたニワトリのような悲鳴を上げる。 「ごめん……痛かった?」 「か、――――こ、こ……」 「そう、傷を負えば痛い……その痛みが分かるなら二度と他人に乱暴しようなんて考えない。 簡単に人をぶっ飛ばすとか蹴っ飛ばすとか強い言葉も使わない。 それから……あ、ほら動かないで青子さん。また手元が狂うよ?」 ベッドの上でのたうち回る青子を押さえつけて冷淡な視線を向けながら説教を落とす教導官。 前言撤回。易々と玩具にされるようなタマではない……この高町なのはという人物も。 物静かでとてもそんな風には見えないが―――高町なのはもまた、どちらかと言えばS属性なワケで…… 「このガキ! 歯を食いしばりなさいッ!!」 上に乗っかっていたなのはを押しのけて青子がガバっと起き上がる。 「その若さにして総入れ歯になる覚悟は既に出来てるワケだ! 明日の朝食は何がいい? 噛めない顎で食べられるモノを用意してあげるわ!」 跳ね飛ばされ、ベッドから転げ落ちて床に叩きつけられるなのはだったが そのまま無理なく受身をとって、中腰の姿勢で相手を正面に構える。 「そんな心配しなくていいよ……朝食くらい自分で作れるからっ! バインドッ!!」 山小屋に響くドタンバタンとした喧騒はもはや何度目になるか分からない 魔法使い同士の取っ組み合いの音。 セイバーとは全く逆のベクトルになるが―――これはこれで良いパートナーなのかも知れない この後、暫く彼女たちは行動を共にするわけであるが、道中は終始こんな感じなのであろう。 ―――この娘の世界と自分達の世界は決して関わるべきではないと思う……… だが、喧騒と戯れ交じりの中にあって――青子の思考には未だ拭えぬ陰があった。 閉鎖的な意見と言ってしまえばそれまでだが、それでも彼女は秘匿された世界のその頂点に位置する魔法使いなのだ。 今は悪ふざけのノリで高町なのはと話している彼女ではあるが、自分の立ち位置・彼女の立ち位置を考えた場合 恐らくこの先、迎合の道を往く事は無いのだろう。 ――― いつか本気で……今度は命を賭けて戦うことになるかも知れない ――― ドタバタ騒ぎの喧騒に紛れ、それでも青子は飄々とした笑みを崩さない。 その瞳に暗雲と漂う暗い感情を映すことは無い。 時が来るまで―――決してその隠した牙を表に出さずに、彼女は高町なのはと共に行く。 (このコを見る限りじゃ取り越し苦労だと思うけど…… 多聞に漏れず色んな人間がいるからね。 どの世界にも――――) 各々の思惑が錯綜するこの世界。 今宵、魔法使いたちの夜が―――――人知れず明けていく。 この二人の出会いが幸福なものとなるか………今はまだ誰にも分からない。
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第6話「決意、そしてお引越しなの」 「じゃあ、メビウスからは何も連絡は……」 「はい……ウルトラサインもテレパシーも、一切ありません。」 地球から遠く離れた宇宙に存在する、M78星雲。 その中にある、地球よりも遥かに巨大な星―――光の国は、ウルトラマン達が住まう星である。 そんなウルトラマン達の中でも、優れた戦闘能力と、そして優しさを持つ戦士達がいた。 彼等はウルトラ兄弟と呼ばれ、宇宙の平和を守る宇宙警備隊の一員として、日夜戦っている。 そのウルトラ兄弟達に、今、未曾有の事態が起きた。 ウルトラ一族にとっては最大の宿敵の一人といえる、最大の悪魔―――ヤプール人が復活を果たした。 ヤプール人とは、異次元に存在する邪悪そのもの。 自らを、暗黒から生まれた闇の化身と豪語する悪魔である。 ヤプール人はこれまで、幾度となくウルトラ一族へと戦いを挑んできた。 ウルトラ兄弟達は、その都度何度も撃退したが……ヤプールは、何度も復活を果たしてきた。 彼等はヒトの負の心を好んでマイナスエネルギーに変えてエネルギー源としているため、その存在を完全に消し去る事は不可能なのだ。 ヒトがこの世から完全に消え失せれば、もしかすると可能かもしれないのだが、そんな馬鹿な話はありえない。 一時は、封印という形で決着をつけられたかのように思えたが……その封印も、悪しき侵略者に破られてしまった。 結局ウルトラ兄弟達は、ヤプールが復活する毎に打ち倒すという手段を取るしかなかった。 そしてつい先日、彼等はヤプールが潜む異次元へと乗り込み、決戦に臨み、ヤプールに打ち勝つことができたのだが…… ここで、予想外の事態が起こった。 ヤプールを倒した影響により、異次元世界は崩壊を迎えようとしたのだが……ヤプールがここで、最後の悪足掻きを見せた。 ウルトラ兄弟の末弟―――ウルトラマンメビウスを、道連れにしていったのだ。 メビウスはヤプールと共に崩壊に巻き込まれ、そして行方不明となった。 兄弟達は、様々な手段を使ってメビウスの捜索に当たっていたのだが、メビウスの行方は全く分からないままであった。 もしもメビウスがまだ生きているとするならば、可能性は一つしかない。 「やはり、崩壊の影響でどこか別の次元に落ちてしまったのか……」 「しかし……そうだとしたら、どうやってメビウスを探せばいいんですか?」 「メビウスから何か連絡があれば、どうにかならなくもないんだが……」 メビウスは、どこか別の異世界にいる可能性が高い。 それがどこか分からないのが、問題ではあるが……それさえ分かれば、救出に向かうことはできる。 ウルトラ兄弟の中には、異なる次元・異なる世界への転移能力を持つものもいるからだ。 今現在、メビウスを救う為に、光の国の者達は一丸となって動いている。 ウルトラ兄弟の長男にして宇宙警備隊の隊長であるゾフィーは、空を仰ぎ遥か彼方―――地球を眺め、弟のことを思う。 「メビウス……一体、どこに……?」 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 「なのは、フェイト!!」 「ユーノくん、アルフさん……」 「二人とも、もう体は大丈夫なのかい? 大分酷いダメージだったけど……」 「うん、何とか。 私はしばらく、魔法は使えないみたいだけど……」 丁度その頃であった。 時空管理局の本局にて、なのは・フェイト・ユーノ・アルフの四人が久方ぶりの再会を果たしていた。 こうして直接顔を合わせるのは、彼等が出会う切欠となったPT事件以来である。 しかし、彼等の表情には喜び半分不安半分という所である。 その原因は、大きく分けて二つ。 一つ目は、言うまでもなくヴォルケンリッター達の存在にある。 そしてもう一つは、なのはとフェイトが受けたダメージの大きさにあった。 なのはは、自分でも攻撃を受けた時点で予想はしていたが……魔力の源であるリンカーコアが、異常なまでに縮小していた。 魔力を吸い取られてしまい、回復するまでの間、一時的に魔法を使えない状態にあったのだ。 フェイトも、なのは程ではないとはいえ、それなりのダメージを受けていた。 しかし何より……二人とも、自分のデバイスに大幅な破損を受けてしまっていたのが大きかった。 レイジングハートもバルディッシュも、再起不能な状況にまで追い込まれてしまっていたのだ。 自己修復作用だけでは間に合わないため、現在パーツの再交換作業の真っ只中にあった。 「レイジングハート……」 「ごめんね、バルディッシュ……私の力不足で……」 「……こういう言い方は何だが、これは二人のミスじゃないよ。」 「クロノ、エイミィ、リンディ提督……それに……」 「ミライさん……」 落ち込むなのは達へと、部屋に入ってきたクロノが声をかけた。 その傍らには、彼の相棒であるエイミィと、アースラ艦長のリンディ。 そして……ミライがいた。 クロノは、自分達が相手をしていた敵の魔法体系―――ベルカ式について、簡潔に説明を始めた。 今回なのは達が敗北したのは、彼女達の魔法体系―――ミッドチルダ式との相性の悪さが大きかった。 ベルカ式とはその昔、ミッド式と魔法勢力を二分した魔法体系。 遠距離や広範囲攻撃をある程度度外視して、対人戦闘に特化した術式である。 ミッドチルダ式と違い、一対一における戦いを念頭に置いてあるものなのだ。 そしてその最大の特徴は、デバイスに組み込まれたカートリッジシステムと呼ばれる武装。 なのは達もその目でしかと見た、ヴォルケンリッター達が使っていたシステム。 儀式で圧縮した魔力を込めた弾丸をデバイスに組み込んで、瞬間的に爆発的な破壊力を得る。 術者とデバイスに負担はかかるものの、かなりの戦闘能力を得られる代物である。 「随分、物騒な代物なんだね……」 「ああ……多くの時限世界に普及している魔術の殆どは、ミッド式だからね。 御蔭で、解析に少しばかり時間を取られてしまったよ……」 「そうだったんだ……」 ベルカ式に関しての説明が終わり、皆は少しばかり考えた。 自分達の使っている魔法が、魔法の全てではない。 これから先、自分達の前に立ちふさがるのは、まだ見ぬ未知なる強敵。 かつてのPT事件と同様か、それともそれ以上の戦いになるかもしれない。 誰もが息を呑むが……その直後であった。 皆が、ベルカ式よりも最も疑問に思わねばならぬ事に気づいた。 戦闘の最中、突如として謎の変身を遂げたミライ―――ウルトラマンメビウスについてである。 当然ながら、視線はミライに集中することになる。 ミライも、ここで隠し事をするつもりはなかった。 丁度いい具合にメンバーも揃っている……ミライは、全ての事情を話し始めた。 「リンディさん達には、先にある程度の説明はさせてもらったけど、改めて全部話すよ。 僕の事……ウルトラマンの事について。」 ミライは、隠していた事情も含めた全てを話した。 自分は宇宙警備隊の一人であり、そしてウルトラ兄弟の一人である、ウルトラマンメビウスである事。 異次元に潜む悪魔―――ヤプールとの戦いの末に、次元の狭間に呑まれた事。 そして気がついたら、アースラに救助されていた事。 自分の正体を明かせば、周囲の者達にも危険が及ぶと判断し、正体を隠していた事。 先に説明を受けていたリンディ・クロノ・エイミィの三人は、二度目となるため流石に驚いてはいなかった。 一方なのは達四人はというと、当然ながら驚き、そして呆然としている。 別世界の人間というだけならば、まだ分かるが……その正体が宇宙人ときては、少々許容の範囲外であった。 そして、ウルトラマンという存在についてにも驚かされた。 宇宙警備隊という、時空管理局に匹敵するほどの大組織の一員として、ミライ達は動いている。 彼は、その中でも特に秀でた戦士であるウルトラ兄弟の一人―――中には、メビウスよりも強いウルトラマンはいるという。 早い話……ミライがとんでもない大物であった事に、皆驚いているのだ。 「えっと……一つだけ、質問してもいいですか?」 「いいけど、何かな?」 「話を聞いてて、少しだけ不思議だったんですけど……ウルトラマンは、どうして地球を守るんですか? 守らなくてもいいとかそういう話じゃなくて、色んな星がある中で、どうして地球を選んだんだって……」 なのはには、ミライの話の中で一つだけ、腑に落ちない点があった。 ウルトラ兄弟達になる為には、地球防衛の任に就く必要があるという。 そうして多くの事を学び、ウルトラ兄弟になるに相応しいまでの成長を遂げるというのだが…… 何故、彼等が防衛する星が地球なのか。 話を聞く限りでは他にも多くの星はある筈なのに、何故態々地球を選んだのか。 そんな彼女の疑問を聞くと、ミライは少しばかり瞳を閉じた後、ゆっくりと口を開いた。 かつて、共に戦った大切な親友からも同じ質問をされた。 その時の事を思い出しながら……ミライは、なのはに答えた。 「僕達ウルトラマンも、元々はウルトラマンの力を持っていなかった。 皆と同じ……地球の人達と全く同じ、普通の人間だったんだ。」 「え……?」 「ある事故が切欠で、僕達はウルトラマンの力を手に入れた。 ……僕達は、地球の人達に自分達を重ねているんだ。 もう戻る事のできなくなった、あの頃の姿を……」 「だから、地球を……」 ウルトラマンが地球を守る理由。 それは、かつての自分達の姿を重ねているからであった。 更に、地球は多くの侵略者達から、特に狙われている星でもある。 だからウルトラマン達は、地球を守ろうと決めたのだ。 そうして人間達を守る戦いを続けていく内に、ウルトラマンとして何が大切なのかを知る事ができる。 それこそが、彼等の戦う理由であった。 だが、メビウスには……いや、これは全てのウルトラマンの思いだろう。 もっと重要な、戦う理由があった。 「それに……」 「それに?」 「僕達は、人間が好きですから。」 「……なるほど、ね。」 「勿論、人間だけじゃなくて……大切なもの全てを、守りたいと思っています。 困っている人がいるなら、その人を助けるためにウルトラマンの力はある。 僕はそう信じてます……だから、決めました。」 「え……決めたって?」 「ミライ君は、元の世界に戻る手立てがつくまでの間、私達に協力してくれるって言ってくれたんだ。」 ミライは、今回の事件に関して全面的に協力すると、リンディへと話を通していたのだ。 自分達を助けてくれた時空管理局の者達に、恩返しがしたいからと。 それに、もう一人のウルトラマン―――ダイナの事が気がかりであるからと。 前者だけでもミライにとっては十分な理由であり、加えて後者のそれもある。 ここで引き下がれというのが無理な話だ。 保護した民間人に戦闘をさせるというのは流石に気が引けたのか、最初のうちはリンディも遠慮していた。 しかし……ミライの積極的な申し出に、彼女も折れたのだ。 最も、局員ではないなのは、フェイト、ユーノ、アルフの四人が協力している時点で、今更な感はあるのだが…… メビウスの力は、確かに今後の戦いを考えると必要不可欠だろう。 闇の書側についているとされる謎のウルトラマンとの戦いには、最も彼が向いている。 なのはやフェイト達どころか、下手をすればアースラ最強の戦闘要員であるクロノさえも危ない程の強敵なのだから。 「さて……それじゃあ、フェイト。 そろそろ面接の時間だが……なのは、ミライさん。 二人も、僕に同行を願えないか?」 「……?」 「面接……うん、いいけど……」 なのはとミライの二人は、面接という言葉の意味がいまいちよく分かっていなかった。 聞く限りじゃフェイトの用事らしいのだが、それにどう自分達が関係するのだろうか。 不思議そうに、二人は顔を見合わせる。 そんな様子を見たクロノは、難しく考える必要はないと言い、部屋を出て行った。 三人は、彼の後についていく。 「エイミィ、面接って?」 「うん、フェイトちゃんの保護観察の事についてだよ。 保護観察官のグレアム提督と、まあちょっとしたお話。 なのはちゃんはフェイトちゃんの友人って事で呼ばれたんだと思うけど…… ミライ君は、まあ色々と大変な事情が重なってるからね。 多分、そこら辺の事に関してじゃないかな?」 「へぇ~……」 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 「クロノ、久しぶりだな。」 「ご無沙汰しています、グレアム提督。」 そしてその頃。 クロノの案内によって、時空管理局顧問官―――ギル=グレアム提督の部屋に三人はついていた。 三人は椅子に座り、グレアムの言葉を待つ。 何処となく緊張している様子の彼等を見て、グレアムは少しばかり苦笑した。 その後、本題に入るべく、手元の資料を見ながら三人へと話しかける。 「フェイト君、だったね。 保護観察官といっても、まあ形だけだよ。 大した事を話すわけじゃないから、安心していい。 リンディ提督から、先の事件や、君の人柄についても聞かされたしね……君は、とても優しい子だと。」 「……ありがとうございます。」 「さて、次は……んん? へぇ……なのは君は日本人なんだな。 懐かしいなぁ、日本の風景は……」 「……ふぇ?」 「はは……実はね、私は君と同じ世界の出身なんだ。 私はイギリス人だ。」 「ええ!!そうなんですか?!」 「あの世界の人間の殆どは、魔力を持たない。 けれど希にいるんだよ、君や私のように、高い魔力資質を持つ者が。」 まさか時空管理局に、自分と同じ世界の出身人物がいるとは、思ってもみなかった。 驚き思わずなのはは声を上げてしまう。 するとそんな様子を見たグレアムは、彼女が予想通りのリアクションをしてくれたのを見て、静かに微笑んだ。 その後、彼は己の身の上話を話し始めた。 「おやおや……魔法との出会い方まで、私とそっくりだ。 私は、助けたのは管理局の局員だったんだがね。 それを機に、こうして時空管理局の職務についたわけだが……もう、50年以上前の話だよ。」 「へぇ~……」 「フェイト君、君はなのは君の友達なんだね?」 「はい。」 「約束して欲しいことはひとつだけだ。 友達や自分を信頼してくれる人のことは、決して裏切ってはいけない。 それが出来るなら、私は君の行動について、何も制限しないことを約束するよ……できるかね?」 「はい、必ず……!!」 「うん……いい返事だ。」 フェイトの力強い返答を聞き、グレアムは安堵の笑みを浮かべた。 その瞳に、一切の迷いはない。 友達の為、大切な人の為に活動できる、強い意志が感じられる……この子はきっと大丈夫だ。 これで、片付けるべき最初の問題は片付けた。 残るは……来訪者、ウルトラマンについて。 「ミライ君だったね……君の話をリンディ提督達から聞かされた時は、本当に驚いたよ。 魔法の力も、君からしたら十分非常識ではあるのだろうが……今の私は、それと同じ気分だね。」 「確かに……僕も最初に皆さんの話を聞いた時は、少し驚きましたよ。」 「はは……君もクロノに呼んでもらったのは、君がいた世界に関してなんだ。 君がいた世界の捜索なんだが、実は私の担当になりそうなんでね。 事情とかは既に聞いているから、改めて君から聞く必要はないが……そういう訳で、挨拶をしておきたかったんだ。」 「そうだったんですか……グレアムさん、よろしくお願いします!!」 「こちらこそ、よろしくだよ。 それで、君の能力に関してなんだが……仲間の人達と連絡を取る手段はないのかな?」 「テレパシーは試してみたんですけど、通じませんでした。 一応、他にももう一つだけ方法があるにはあるのですが……それは、地球に着き次第試してみたいと思います。 ウルトラマンに変身した状態じゃないと、使える力じゃないですからね。」 「うん、分かった。 それと、もう一つ質問するが……気になる事があってね。 君が一戦交えた、あのもう一人のウルトラマンについてなんだが……分かる事は何かないかな? どんな些細な事でもいいから、教えて欲しいんだ。 捜索の鍵になるかもしれないからね。」 「はい……けど、残念な事にはなるんですけど……」 「残念な事……?」 「僕とあのウルトラマン……ダイナとは、初対面なんです。 だから、お互いの事は何も分からないんです。」 「初対面……? ミライさんも会ったことがないウルトラマンさんなの?」 「うん……」 ミライとて、全てのウルトラマンを把握しているわけではない。 実際問題、かつて地上に降り立ったハンターナイトツルギ―――ウルトラマンヒカリの事は知らないでいた。 それに、光の国以外にもウルトラマンは存在している。 獅子座L77星生まれであるウルトラマンレオとアストラがその筆頭である。 この二人のみならず、ジョーニアス、ゼアス……彼等の様な他星の者達も含めれば、数は相当なものになる。 いや、そもそも……それ以前にあのウルトラマンは、自分がいた世界のウルトラマンなのだろうか。 なのは達の世界にウルトラマンが存在していない以上、ダイナは必然的に別世界のウルトラマンということになる。 問題は、その別世界がはたして自分のいた世界と同じなのかどうかという事である。 異次元世界での戦いにおいて、次元の裂け目に落ちたのは自分とヤプールだけだった。 まさかダイナがヤプールな訳がないし、そもそもヤプールがあのダメージで生きているとは思えない。 そうなると……ダイナは、もしかしたら別の世界のウルトラマンなのかもしれない。 自分と同じで、何らかの方法でこの世界に来たウルトラマンなのかもしれないのだ。 これに関しては、本人から聞き出す以外……知る方法はないだろう。 「ただ、戦ってみて分かったんですが……ダイナからは、邪悪な意思は感じられなかったんです。」 「邪悪な意思が……?」 「僕は今までに二回、同じウルトラマン同士でのぶつかり合いを経験した事があります。 その内の一人は、憎しみに捕らわれた可哀想な人でしたが……あの人から感じたような、憎悪とかはないんです。 寧ろダイナは、レオ兄さんの様な……強い信念を持っているように感じられました。」 ミライが、ダイナとの戦いで感じた事。 それは、彼から邪気が感じられないという事実であった。 かつて彼は、ハンターナイトツルギとウルトラマンレオと、二人のウルトラマンと対峙した経験があった。 ツルギとのそれは、対決にまでは至らなかったものの、ミライにとっては忘れられない記憶であった。 目的の為ならば手段を選ばず、ただ復讐の為に力を振るうツルギから感じられたのは、圧倒的な憎悪だった。 ダイナからは、そんな憎悪の様な感情は一切感じられなかった。 寧ろ、ウルトラマンレオの持つ強い正義感に近いものが彼にはあったのだ。 レオがミライに戦いを挑んだのは、敵に破れたミライを鍛えなおす為であった。 強敵を打ち倒す為のヒントを、彼は戦いの中でミライへと授けたのである。 あの行動は、紛れもなく正義を貫く為のもの。 大切な故郷である地球を守り抜きたいという、強い想いによるものであった。 ダイナには、それがあった。 「そうか……クロノ、今回の事件に関しては……」 「はい、もう、お聞き及びかもしれませんが…… 先ほど、自分達がロストロギア闇の書の、捜索・捜査担当に決定しました。」 「分かった……ミライ君。 君はあのウルトラマンとは、この先間違いなく対峙することになる。 その時、君は彼を止められるかな?」 「……絶対とは言い切れません。 ですが、ダイナは話が通じない相手ではないような気がします。 だから何とかして彼の目的を聞き、それが悪いことでないのならば、僕は彼を助けたいと思います。 避けられる戦いは、避けたいですから。 でも、もしも彼に邪な目的があるなら、そうでなくとも彼が立ちはだかる道を選ぶなら……僕はダイナと戦います。 皆を守るために、ダイナを何としても止めてみせます。」 「そうか……いい目をしているね。 君ならば、きっと大丈夫だろう……分かった。 あのウルトラマンダイナに関しては、君が一番頼りになるだろう。 クロノ達と助け合って、最善の道を歩めるよう頑張ってくれ。」 「はい!!」 「私から、君達に話すことは以上だ。 ……クロノ、私の義理では無いかもしれんが、無理はするなよ。」 「大丈夫です……急事にこそ冷静さが最大の友。 提督の教えどおりです。」 「そうだな……」 「では、失礼します。」 四人はグレアムに一礼した後、退室していった。 理解のある人で、本当によかった。 ミライ達は、心からそう思っていた。 彼の心に答える為にもと、三人は精一杯の努力をする決意を固めるのだった。 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 「はやてちゃん、お風呂の支度できましたよ。 ヴィータちゃんも、一緒に入っちゃいなさいね。」 「は~い。」 同時刻、海鳴市。 八神家では、何てことない平和な日常の光景が見られた。 風呂が沸いた為、はやてとヴィータ、シャマルが三人で風呂場へと向かう。 シグナムはソファーに座って新聞を読み、ザフィーラは横になって寛いでいる。 そしてアスカはというと、テレビでやってるクイズ番組に夢中になっていた。 『ヘキサゴン!!』 『主にオーストラリアに分布する、その葉がコアラの主食として知られるフトモモ科の植物は何でしょう?』 ピンポンッ!! 『はい、つるの押した。』 『よしきたぁっ……笹ッ!!』 ブーッ!! 『え、何でだよ!?』 『……あのなぁ、つるの!! それコアラじゃなくてパンダやんけ!!』 「やっべ……俺も同じ事考えちまってたよ。」 「おいおいおい……」 「はは……シグナムは、お風呂どうします?」 「私は今夜はいい……明日の朝にするよ。」 「へぇ、お風呂好きが珍しいじゃん……」 「たまにはそういう日もあるさ。」 「ほんなら、お先に~」 三人が風呂場へと入っていく。 その後、ザフィーラはシグナムへと振り返った。 彼女が何故風呂に入るのを拒んだのか、何となく理由が分かっていたからだ。 アスカも二人の様子を感じ取り、振り返る。 「今日の戦闘か?」 「聡いな……その通りだ。」 「もしかしてシグナムさん、どっか怪我を?」 シグナムは少しばかり衣服を捲り上げ、二人に下腹部を見せた。 その行動にアスカは一瞬顔を赤らめ、反対方向へと向いてしまう。 しかし、見たのが一瞬であったとはいえ、十分に確認する事は出来た。 彼女には確かに、黒い傷跡があったのだ。 それは、フェイトとの戦いによって着けられたものであった。 「お前の鎧を撃ち抜いたか……」 「澄んだ太刀筋だった……良い師に学んだのだろうな。 武器の差が無ければ、少々苦戦したかもしれん。」 「でも……きっと、大丈夫っすよ。 今日初めて戦ってるところは見たけど……シグナムさん、結構強そうに見えたし。」 「ふふ……それはありがたいな。 そういうお前こそ……互角の戦いぶりだったな。」 「はい……ウルトラマンメビウス。 あいつとは、また戦うことになるだろうけど……負けません。 次は、必ず……!!」 「ああ……我ら、ヴォルケンリッター。 騎士の誇りに賭けて……」 『おい……お前、アホやろ。』 「あ、つるの抜けた。 よかったぁ、ビリじゃなくて……何か俺、こいつに親近感感じるんだよなぁ。」 「……ビリとビリの一歩手前とじゃ、五十歩百歩じゃないか?」 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 「親子って……リンディさんとフェイトちゃんが?」 「そう、まだ本決まりじゃないんだけどね。 養子縁組の話をしてるんだって……プレシア事件でフェイトちゃん天涯孤独になっちゃったし。 艦長の方から、「うちの子になる?」って。 フェイトちゃんもプレシアのこととかいろいろあるし……今は気持ちの整理がつくのを待ってる状態だね。」 場所は時空管理局本局へと戻る。 なのははエイミィから、フェイトがリンディから養子縁組の話を受けたことを聞かされた。 この話は、とてもいいことだとなのはは感じていた。 無論、フェイトの気持ちの整理などもあるから、まだ先の話にはなるのだろうが…… 彼女達が親子となるならば、きっと上手くいくに違いないとなのはは思っていた。 そしてそれは、エイミィやクロノ達にとっても同様である。 (親子、か……) 二人の話を聞いていたミライは、昔の事を思い出していた。 自分も以前に一度、養子にして欲しいといってある人物を訪ねた経験があった。 相手は、今のこの姿―――ヒビノミライとしての姿のモデルとなった人物の、父親である。 彼はミライと暮らすことは出来ないと、その申し出を拒否した。 しかし……ミライが進むべき道を、はっきりと示してくれた。 彼の協力がなければ、今の自分はなかった……そう思うと、やはり感謝すべきだろう。 「さて……皆、揃っているわね。」 噂をすればなんとやら。 丁度、フェイトとリンディの二人が部屋へとやってきた。 それを合図に、騒がしかった室内が一気に静かになる。 今この部屋には、アースラクルーの者達が勢揃いしていた。 今回の事件に関しての説明が、これから行われるのである。 「さて、私たちアースラスタッフは今回、ロストロギア・闇の書の捜索、および魔導師襲撃事件の捜査を担当することになりました。 ただ、肝心のアースラがしばらく使えない都合上、事件発生地の近隣に臨時作戦本部を置くことになります。 分轄は観測スタッフのアレックスとランディ。」 「はい!!」 「ギャレットをリーダーとした、捜査スタッフ一同。」 「はい!!」 「司令部は私とクロノ執務官、エイミィ執務官補佐、フェイトさん、ミライさん、以上4組に別れて駐屯します。」 各々の役割分担について、リンディが説明し始めた。 地上におかれる司令部には、リンディ達五人が駐屯する事になる。 そして、その肝心の司令部の場所はというと…… 「ちなみに司令部は……なのはさんの保護をかねて、なのはさんのおうちのすぐ近所になりまーす♪」 「えっ……!!」 「……やったぁっ!!」 なのはとフェイトは顔を見合わせ、満面の笑みを浮かべた。 その様子を見て、アースラクルー皆も笑顔を浮かべる。 今回の事件は、なのは達の世界が中心だからそこに司令部を置くのは当然のことではあるものの。 中々、リンディも粋な計らいをしてくれたものである。 早速引越しの準備ということで、皆が動き始めた。 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 「うわぁ……すっごい近所だぁ!!」 「ほんと?」 「うん、ほらあそこ!!」 翌日。 なのは達は、司令部―――高町家から凄く近い位置にあるマンションにて、引越し作業の最中であった。 なのはとフェイトの二人はベランダから、外の風景を眺めている。 ミライはエイミィやクロノ達と一緒に、荷物の運び込みをしていた。 するとエイミィは、ある事に気付いた。 ユーノとアルフの姿が、人間ではない……動物形態へと変化していたのだ。 「へぇ~、ユーノ君とアルフはこっちではその姿か。」 「新形態、子犬フォーム!!」 「なのはやフェイトの友達の前では、こっちの姿でないと……」 ユーノはフォレットへと、アルフは子犬へとその姿を変えていた。 二人とも、正体を隠しておかなければならない事情があるために、動物形態を取っていたのである。 そこへとミライもやってきたわけだが……そんな二人の姿を、彼はじっと見つめていた。 「ミライさん、何か……?」 「いや……今凄く、二人に親近感が沸いちゃったから。 正体を隠す為に変身する……分かるよ、その気持ち。」 「あ~……そういえば、似たような身の上だったわよね、あたし達。」 「わぁ~!! ユーノ君、フェレットモードひさしぶり~!!」 「アルフも、ちっちゃい……」 「あはは……」 なのははユーノを、フェイトはアルフを抱きかかえた。 するとそんな時、クロノから二人の友達が来たと言われ、二人は玄関へと走っていった。 リンディも折角だからと、一緒についていく。 その後、なのは達はフェイトの歓迎会の為に、リンディは挨拶の為に、翠屋へと向かっていった。 「早速仲良しですね、フェイトちゃん達。」 「前々から、ビデオメールとかはやってたからね。 初対面って言うのとはちょっと違うし……あれ?」 「エイミィさん、どうしたんですか?」 「あはは……艦長ったら、忘れ物しちゃってるよ。 これ、フェイトちゃん達に見せてあげなきゃ……ミライ君、折角だし届けてもらっていいかな?」 「はい、いいですけど……これって?」 「フェイトちゃんにとっての、最高のプレゼントだよ。」 ミライはエイミィからある小包を受け取った。 その中身が何なのか、それを聞くとミライも笑みを浮かべた。 きっとフェイトは、喜んでくれるに違いないだろう。 駆け足で、ミライはフェイト達を追いかけていった。 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 「ユーノ君、久しぶり~♪」 「キュ~」 「う~ん……あんたのこと、どっかで見た覚えがあるような……」 「ク~……」 「にゃはは♪」 翠屋の前のオープン席で、なのはとフェイト達は、友人のアリサ=バニングスと月村すずかの二人と過ごしていた。 ユーノとアルフも混じって、楽しげに四人は会話をしていた。 すると、そんな最中だった。 なのはは、小包を持ってこちらに近づいてくる人物―――ミライの存在に気付いた。 「あれ……ミライさん?」 「あ、いたいた。 フェイトちゃん、これリンディさんからの贈り物だよ。」 「え、私に……?」 「なのは、この人は?」 「初めまして、僕はヒビノミライって言うんだ。 お仕事の都合で、しばらくの間フェイトちゃんの家でお世話になってるんだ。」 「へぇ、そうなんですか……」 「ミライさん、これって?」 「開けてごらん。」 ミライに促され、フェイトは小包を開けた。 すると、その中にあったのは、最高のプレゼントであった。 なのは達三人が通っている、聖祥小学校の制服であった。 これが意味する事は、一つしかない……彼女達は、たまらず声を上げた。 その後、フェイトは店内でなのはの両親へと挨拶をしているリンディの元へと走っていった。 なのは達三人も、その後に続く……その後姿を、ミライはしっかりと見守っていた。 (……世界が違っても、やっぱり同じだ。 僕は、あんな笑顔を守りたい……兄さん達には少し悪いけど。 問題が片付いて、元の世界に戻れるようになるまで……精一杯、頑張ろう。 皆と一緒に……!!) 戻る 目次へ 次へ
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第5話「暗黒の魔の手」 アスカ=シン―――ウルトラマンダイナの乱入。 それも闇の書側につくという事態に、誰もが動きを止めて驚くしかなかった。 それは、もう一人のイレギュラー―――黒尽くめの男にとっても同様である。 「……多次元のウルトラマンか。 これは確かに、イレギュラーだな……」 メビウスがこの世界に現れたのは、重々承知していた。 その上でなおも、全ては筋書き通りに運ばれていたはずだった。 しかし、黒尽くめの男にとってこの事態―――ダイナの参戦は、完全な予想外であった。 この世界に、ウルトラマンは存在しない筈。 異次元での戦いにより、この次元世界へと転移してしまったメビウスが唯一の存在だった筈。 自らをダイナと名乗ったウルトラマンが、ならば何故存在しているのか。 その理由は一つ……彼もまた、別世界のウルトラマンであるということだ。 「出来る事ならば、まだ介入はしたくなかったが……やむをえんな。」 男の掌から、黒いガス状の何かが湧き上がってくる。 そのガスの名は、宇宙同化獣ガディバ―――男の意のままに動く、一種の生物である。 男が見つめる先にいるのは、結界を破壊すべく魔力を集中させているなのは。 予定よりも少しばかり早いが、驚異的な相手が増えてしまった以上、チャンスは今しかない。 (ましてやあのダイナと名乗るウルトラマンは、闇の書側にいる。 メビウスよりも下手をすれば危険だ……あの二人だけでは、役不足かもしれん。) ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 「デャァァァァッ!!」 「ジュアッ!?」 メビウスvsダイナ。 ウルトラマン同士での争いという、まさかの事態……優勢なのは、ダイナであった。 ダイナの方が優勢な理由は、ウルトラマンの戦闘方法の根源にあった。 ウルトラマンは、人知を遥かに超える多彩な光線技や超能力を持つ。 ならば、何故それを駆使して最初から勝負に出ないのか。 その理由は、エネルギーの消費を抑えるためであった。 ウルトラマンとて、永続的に戦えるわけではないのだ。 かつてダイナは、人工的にウルトラマンを作り出す計画――F計画の為に、利用されたことがあった。 その結果、人造ウルトラマンテラノイドが誕生した。 しかしこのテラノイドは、実戦においてとてつもない失敗を犯した。 テラノイドは、光線技を乱発しすぎ……すぐにガス欠を起こして倒されてしまったのである。 これはテラノイドのみならず、全てのウルトラマンに共通する問題である。 事実メビウスは、かつてニセウルトラマンメビウス―――ザラブ星人と敵対した際。 テラノイドと同様のミスを犯し、後から現れた異星人に打ち倒されてしまった経験があった。 だから、彼等が光線技を使うのはここぞという時ばかりなのだ。 それ故に、二人は格闘戦において戦闘を繰り広げていたのだが……単純な身体能力では、ダイナが勝っていた。 彼の豪快なパワーに、メビウスは圧倒されていたのだ。 メビウスにとって、これ程格闘戦で追い詰められることは久しぶりであった。 (レオ兄さんやアストラ兄さん並だ……いや、パワーだけならもっと……!!) 「デャァッ!!」 (けど……それだけで全部決まるわけじゃない!!) ダイナは加速の勢いに乗せ、全力の拳を突き出してくる。 命中すればタダではすまない……防御か回避か。 普通ならば、この二択のどちらかを取るのが当然である。 しかし……メビウスはそのどちらも取らなかった。 三つ目の選択肢―――カウンターを選んだのだ。 メビウスブレスの力が解放され、左の拳に集中される。 ライトニングカウンター・ゼロ。 メビウスブレスのエネルギーをプラズマ電撃に変えて、零距離から敵に叩き込む必殺の一つ。 ダイナの一撃に合わせ、メビウスは左の拳を突き出した。 狙いはクロスカウンター……当然ながら、命中すれば半端ではないダメージが乗る。 そして、先に攻撃を命中させたのは…… ドゴォォンッ!! 「デュアアァァァッ!!??」 「セヤァァァァッ!!」 紙一重の差で、メビウスの一撃が先にダイナを捉えた。 ダイナはパワーこそメビウスに勝っているものの、テクニックではメビウスに劣っていた。 ライトニングカウンター・ゼロの直撃を受け、後方のビルへと勢いよく吹き飛び、派手に激突する。 粉塵が巻き起こり、ダイナの姿がその中へと隠される。 今の一撃で、確実に怯んだ筈……倒すならば今しかない。 「ハァァァァァァァッ……!!」 メビウスは右手をメビウスブレスに添え、大きく腕を開きその力を解放する。 その瞬間、∞の形をした光が一瞬だけその姿を見せた。 そして、メビウスは腕を十字に組み、必殺の光線技―――メビュームシュートを放った。 「セヤァァッ!!」 ダイナを殺すつもりはない……だが、手加減して勝てる相手ではない。 そう判断したが故に、メビウスは敢えて全力で挑んだ。 メビュームシュートが直撃すれば、ただではすまないだろう。 今まさに、命中の瞬間が迫ろうとしていた……しかし。 「デュアァッ!!」 「!?」 粉塵を突き破り、蒼白い光線がその姿を現した。 ダイナは怯んでいなかった。 いや、怯んではいたかもしれないが……すぐに復活を果していたのだ。 そして、メビウスがメビュームシュートを放とうとしたのを感じ……とっさに同じ行動を取っていたのだ。 ダイナ必殺の光線―――ソルジェント光線。 両者の光線が、空中でぶつかり合った。 威力は互角……両者共に、鬩ぎ合っていた。 「クッ……ウオオオオォォォォォッ!!」 「ハアアァァァァァァァァァァァァァッ!!」 二人は光線に全力を注ぎ込み、相手に打ち勝とうとする。 光線の勢いは強まるが……それでも互角。 このままでは埒が明かない。 そう思われた……その瞬間だった。 二つの光線が、鬩ぎ合いに耐え切れなくなったのか……爆ぜたのだ。 強烈な爆発が起こり、メビウスとダイナはその余波で大きく吹き飛ばされる。 「グゥゥッ!?」 「ガハッ!?」 二人は建造物を三つほどぶち抜き、四つ目にぶち当たったところでようやく止まった。 どうやら、光線の破壊力は相当なものだったようだ。 しかし、まだカラータイマーの点滅にまでは至っていない。 戦いを継続する事は十分可能……そう判断するやいなや、二人は勢いよく空へと飛んだ。 守るべき一線がある……この戦いは負けられない。 二人が、眼前の敵を打ち倒すべく攻撃を放とうとするが……その時だった。 「ん……これは!?」 「凄いエネルギーだ……これが、なのはちゃんの……!!」 膨大なエネルギーが、一点―――なのはのいる場所へと集中しつつある。 それを感じ取った二人は、思わず彼女へと顔を向けてしまった。 なのはは既に、スターライト・ブレイカーの発射態勢に入っていた。 レイジングハートが、発射までのカウントダウンを読み上げている。 「Ⅸ、Ⅷ、Ⅶ……」 「あいつ、魔力を収束させているのか……!? くそ……何かは分かんねぇけど、止めなきゃやべぇ!!」 ヴォルケンリッター達も、ダイナ同様に収束されつつある膨大な魔力に気づいた。 一体なのはが、これだけの魔力を使って何をするかは分からない。 単純に攻撃を仕掛けるつもりなのか、結界を破壊するつもりなのか―――どちらにせよ、嫌な予感がする。 皆がそれを阻止すべく、奇しくも同時に動こうとした。 しかし……当然ながら、その行動は阻まれる。 ダイナはメビウスに、シグナムはフェイトに、ザフィーラはアルフに、ヴィータはユーノに。 行く手を阻まれ、彼等は歯がゆい思いをしていた……かのように、思われていた。 だが、事実はそうではない。 何故なら――― 「補足完了……!!」 なのは達に存在を知られていなかった伏兵―――シャマルが、ヴォルケンリッター側にはいたからだ。 クラールヴィントの二本の糸が、空中で円を形取る。 そしてその内部に出来上がった空間へと、彼女は勢いよく手を入れにかかった。 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 「そこだ……!!」 シャマルが行動を起こそうとした、まさしくその瞬間。 レイジングハートのカウントダウンが、残りⅠとなったのと同時だった。 黒尽くめの男が、勢いよく掌を突き出し……ガディバを解き放った。 ガディバは真っ直ぐに、なのはの背後から凄まじいスピードで接近する。 当のなのはは勿論、他の者達もそれには気づかない……いや、気づけないでいた。 そして、なのはがスターライトブレイカーを放とうとしたその時。 シャマルが、手を突き入れたその時。 ガディバはなのはの体内へと侵入を果し……そして。 「え……!?」 「あっ……しまった、外しちゃった。」 突然、なのはの胸から一本の手が生えた。 クラールヴィントを通じて、シャマルの手が彼女を突き破ったのだ。 とはいっても、なのはには肉体的なダメージはない。 シャマルの目的は、それとは別にあった。 彼女は狙いが外れたのを感じ、すぐに手を入れなおす。 直後、その手には赤く煌く光球が握られた。 これこそが、魔道士にとっての力の源。 その者が持つ魔力の中枢―――リンカーコア。 「リンカーコア、捕獲……蒐集開始!!」 シャマルはもう片方の手を、闇の書へと乗せた。 その瞬間……白紙だった筈の書物のページに、文字が次々に浮かび上がり始めた。 10ページ、いや20ページぐらいは一気に埋まっただろうか。 それに合わせて、なのはのリンカーコアが収縮をし始めていた。 (魔力が……吸い取られていく……!?) なのはは、リンカーコアの正体は知らない。 しかし、今の自分に何が起きているのかは、十分に理解できていた。 魔力が失われつつある―――吸い取られつつある。 このままではまずい。 全てが無駄になるその前に、やらなければならない―――なのはは、精一杯の力を振り絞った。 その手のレイジングハートを、勢いよく振り下ろす……!! 「スター……ライト……!! ブレイカアァァァァァァァァァァァァァァッ!!」 桜色の光が、砲撃となって撃ち放たれた。 メビュームシュートやソルジェント光線すらも上回る破壊力を持つ、強烈な必殺。 それは、海鳴市を覆い隠していた結界に直撃し……見事に風穴を開けた。 結界が崩壊していく……なのはは、結界の破壊に見事成功したのだ。 とっさにシャマルは、手を引っ込めた。 そして、それと同時に……なのはは地に膝を着き、そのまま前のめりに倒れこんだ。 「なのはぁっ!!」 『結界が破壊された……!! 離れるぞ!!』 『心得た……!!』 『うん……一旦散って、いつもの場所でまた集合!! ヴィータ……アスカさんをお願い。』 『分かった……アスカ、お前はあたしと一緒に来てくれ。 集合し終えたら、全部改めて話すから。』 『……うん、分かった。』 結界が破られた以上、時空管理局の更なる介入は確実。 ヴォルケンリッター達は、早々の撤退を決め込んだ。 事情をいまいち飲み込めていないダイナは、ヴィータについていく形となる。 逃げていく彼等を追いかけようと、とっさにメビウスも動くが…… 「待ってくれ……どうして、こんなことを!!」 「メビウス……ハァッ!!」 ダイナは二発目のソルジェント光線を、後方へと振り返り発射した。 とっさにメビウスは、メビウスディフェンサークルで防御をするが……耐え切れずに吹っ飛んだ。 その隙を突き、彼等はそのまま戦域を猛スピードで離脱していった。 完全に……逃げられてしまった。 「どうして……同じ、ウルトラマンが…… そうだ、なのはちゃん!!」 「アルフ、アースラに連絡急いで!! 早くなのはを!!」 「分かってる、もうやってるよ!!」 すぐさま皆が、なのはの元へと駆けつけた。 メビウスは着地すると同時に、変身を解き元のミライへと戻る。 なのはは完全に意識を失っている。 ユーノが回復呪文で応急処置を施してはいるが、これで元通りには流石にならない。 フェイトとアルフがアースラにすぐさま連絡を入れ、医療班を寄越すよう要請する。 自分達の、完全な敗北……そうとしか言えない結果であった。 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 「それで、皆……」 「アスカさん、隠してごめんなさい。 でも、アスカさんを危険な目にあわせるわけにはいかなかったし……」 しばらくした後。 海鳴市から離れた人気のない場所で、ヴォルケンリッター達は再集合を果していた。 その後、ヴォルケンリッターはアスカへと、自分達の事情の全てを説明した。 自分達は、闇の書の意思によって作り出された守護プログラムだと。 闇の書の主を守り抜くことこそが、自分達の役目であると。 そして、主を―――闇の書に蝕まれつつあるはやてを助ける為に、自分達は戦っていると。 リンカーコアを蒐集し、闇の書を完成させればはやては回復するかもしれない。 少なくとも、病の進行を止める事は十分に可能である。 主の未来を血に染めない為に、命を奪いまではしない。 だが……主を助ける為ならば、如何なる茨の道をも進んで歩もう。 そんな強い覚悟の上で自分達は行動していると、ヴォルケンリッターはアスカに告げた。 「すまないな、アスカ。 我々の戦いに、お前まで巻き込んでしまう形になって。」 「いや……それは構わないよ。 そういう事情があるんなら……いや、事情云々じゃなくて、皆を助けたいから俺は戦ったんだし。 ……俺の事も、話さなくちゃいけないな。」 騎士達が全てを話してくれた以上、自分には事情を話す義務がある。 そう判断したアスカは、隠していた全てを話すことにした。 これまで度々話題に出していたウルトラマンダイナとは、実は自分自身であると。 ふとした切欠でダイナの力を手に入れ、ずっと悪と戦い続けてきたと。 暗黒惑星グランスフィアとの最終決戦後、ブラックホールに飲み込まれ、そしてこの世界にやってきたと。 話せることは、何もかもを話したのだ。 全てを聞かされたヴォルケンリッター達は、やはり驚きを隠しきれないでいる。 驚くのは、無理もないだろう……アスカもそう思っていた。 そして、この次に騎士達がどう質問してくるかも……大体想像がついていた。 「どうして……正体を隠していたんだ?」 「確かにあれだけ強い力があるのなら、不用意に明かせないのは分かるが……」 「目立ちたがりのお前にしちゃ、なんかなぁ……」 予想通り、騎士達は正体を隠していた理由について聞いてきた。 これに対しアスカは、少し間を置いた後に答える。 かつて自分の正体に気づき、そして同じ問いをしてきた仲間達にしたのと……同じ答えを。 「俺、確かに目立ちたがり屋だけど……それ以上に、照れ屋なんですよ。」 「……」 「………」 「……今の答え、変だった?」 「……はは。 いや……お前らしいよ。」 「ったく……しょうがねぇ奴だなぁ。」 アスカの答えは、予想を大幅に裏切ってくれた。 これに対しヴォルケンリッターは、流石に苦笑するしかなかった。 どんな深刻な理由があるのかと思ったら……アスカらしい理由である。 しかし……彼等の笑みも、すぐに消えた。 お互いの事を話し合った以上、今後は互いにどうするのかを話さなければならない。 もはや、今までどおりというわけにはいかないのだ。 しばらくの間、五人とも沈黙せざるを得なかったが……アスカが、その沈黙を真っ先に破る。 「……俺は、魔法とかそんなのはよく分からないけど。 闇の書さえ何とか完成させれば、はやてちゃんを助けられるんだよな……」 「アスカ……いいのかよ? この戦いはあたし達守護騎士の総意だけど、お前までそれに……」 「はやてちゃんが危険な目にあってるってのに、助けられないなんて俺はごめんだから。 俺には皆と同じように、戦う力が……ダイナの力があるんだ。 そしてそれを使うのは……きっと今だ。」 「アスカ……」 「だから……これから、よろしく!!」 「……ああ、こちらこそよろしく頼むぞ!!」 アスカの決意は固かった。 この世界にきて天涯孤独の身であった自分を、彼等は家族として扱ってくれた。 自分の大切な家族である者達を、この手で助けたい。 ダイナの力は、大切な人達を助ける為にあるのだ。 それを振るうチャンスは、正しく今である。 アスカは強い決意を表し、真っ直ぐに拳を突き出す。 それに合わせ、ヴォルケンリッター達も己の拳を合わせた。 この時アスカは、新たなる騎士となった。 はやてを守るためにその力を振るう、5人目のヴォルケンリッターとなったのだ。 「あ……そういえば、聞き忘れてたけど。」 「ん?」 「アスカ、あのメビウスって言うウルトラマンの事は何も知らねぇのか?」 「あいつか……ああ、ごめん。 俺もあのウルトラマンの事は、何も知らないんだ。」 メビウスの正体に関しては、アスカが一番気になっていた。 彼が知るウルトラマンは、己を除けばたった一人―――ウルトラマンティガだけである。 一応、異星人が変身を遂げたニセウルトラマンダイナや、人造ウルトラマンの様な存在もいるにはいる。 だが……メビウスは、明らかにそんな紛い物とは違う感じがした。 ティガやダイナと同じ、本物のウルトラマンである。 しかし、アスカが知らないウルトラマンがいることに関しては、大した不思議はない。 元々ティガやダイナの力は、ある遺跡の中に、彼等の姿をした石像と共に眠っていた。 その遺跡には、他のウルトラマンらしき者達の石像もあったのだ。 もしかするとメビウスは、そんな別のウルトラマンなのかもしれない。 少なくとも、アスカはそう考えていた。 「多分、あいつとはまた会う事にはなるだろうけど……その時に何か分かるかもしれないな。 この世界に俺以外のウルトラマンがいること自体、おかしいんだし。」 「そうだな……おかしい、か。 そういえばシャマル、さっきリンカーコアを捕獲しようとした時に、失敗していたな。」 「お前にしては、随分珍しいミスだな。 捕獲を失敗した事など、これまで一度もなかったというのに……」 「うん……手を入れたときに、何か妙な違和感があったの。」 「違和感?」 「リンカーコアとは別の、何かがあの子の中にあったような感じがしたの。 でも……気のせいだったかもしれないわね。 今考えてみたら、アスカさんの事でちょっと戸惑ってたし。」 「そうか……無理はしないでくれ。 もしも体調が優れないようならば、すぐにでも言ってくれ。」 「ええ、分かっているわ。」 シャマルが捕獲を失敗したという、これまでにないミス。 それに、ヴォルケンリッター達は少しだけ不安を感じていた。 だが、どんな人間にも100%はありえない……失敗は十分に起こりえる。 今回の失敗は、たまたまその僅かな可能性に当たっただけだろう。 シャマル自身も、アスカの変身により少しばかり戸惑っていたからだと言っている。 その為、皆もこの話題に関しては打ち切る事にした。 しかし……この時、誰が予測しただろうか。 闇の書の中には、今……彼等も知らぬ、未知の存在があることを。 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 「上手くやったようだな……」 「ああ……予定より少しばかり早くなってしまったが、問題はない。」 結界が消え、元通りとなった海鳴市。 その一角で、黒尽くめの男ともう一人―――仮面をつけた謎の男が対峙していた。 敵対しているという風な感じはなく、どちらかというと協力者同士の様な印象が強い。 「あの魔道士を介して、私は切り札を闇の書に送り込んだ。 本来ならば、予め憑依させておいた生物を蒐集させる事で、憑かせるつもりだったが……」 「綱渡りな方法であったとはいえ、結果的に成功した。 成果は得られたのだから、それで十分だ。」 「ああ……万が一の際には、これで力を押さえ込むことが可能だろう。」 「……すまないな、助かる。」 「気にするな……我々とて、闇の書によって同胞を失った。 あれを止めようと願う気持ちは同じだ……」 黒尽くめの男は、懐から一枚のカードを取り出した。 それは、起動前の形態を取っているデバイスだった。 黒尽くめの男はそれを、仮面の男へと確かに手渡す。 「約束の品だ、受け取ってくれ。 我等の技術を結集させて作り上げた……性能は保証しよう。」 「ああ……これから我等は、闇の書の完成を急ぐ。 万が一の時は、そちらに任せるぞ。」 「分かった……お互い、気をつけるとしようか。」 仮面の男はデバイスを懐にしまい、そしてその場から姿を消した。 場に残された黒尽くめの男は……一人、笑っていた。 仮面の男を嘲笑するかのように、確かな笑みを浮かべていた。 「そう……気をつける事だな。 我々は暗黒より生まれ、全てを暗黒へと染める悪魔……そんな我等と、貴様達は手を組んでしまった。 御蔭で、どの様な結末になってしまうのかも知らずになぁ……」 全ては悪魔の筋書き通りだった。 唯一イレギュラーがあるとすれば、やはりそれはダイナの存在である。 未知数の力を持つウルトラマンが相手なだけに、全く今後の予想がつかない。 だが……それでも、問題はない。 何か厄介な事態が起ころうものならば、強引に修正するだけである。 全ては……力を手にし、光をこの世より消し去る為。 「ふふふ……はははははははは……!!!」 戻る 目次へ 次へ
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ウイングロードで突っ走った先にあるのは、狙撃型オートスフィア。 遠くからさんざ撃たれまくったけれど、 ティアの幻術が道を拓いて、やっとあたしの射程内。 半年に一度のBランク昇格試験、ここで落とせば、また半年後。 あたしだけじゃない、ティアの夢が、こんなところでつまづくのなら。 足をくじいたティアを放って、あたしだけがゴールするくらいなら。 そんな未来は、握った拳でぶち砕く。 あの日、あの時、あの人が、あたしにそうしてくれたように。 そして、もう二度と、守れないことのないように。 神 聖 破 撃 ディバイン・バスター 魔力球、形成! 振り抜く右のリボルバーナックルで殴打、衝撃波、発生! 敵の攻撃全部はね飛ばし、無理矢理に隙をこじ開ける。 分厚い天井をぶち抜いて生きる道を創ってくれた、あの人の魔法。 間髪入れずにウイングロード、展開! ローラーブーツ、最大加速! 作った道は、あたし自身で駆け上って、極めるんだ! 右の振り抜きざま、左の素拳に込められた力は、 踏み出した足と同時に、真正面の『未来』にめり込む。 「 因 果 (いんが)!」 あの日の空に 見つけた憧れ あたしは あたしの なりたいあたしに なる ! 魔法少女リリカルなのはStrikerS 因果 第九話『二人(前編)』 「因果だってよ、覚悟くん」 「否、あれはディバインバスターなり」 照れなくてもいいのに。 少し嬉しそうで、少し哀しそうな顔をしている覚悟くん。 やっぱり、一度は生命を助けた子だから、 わざわざ戦いの場に戻ってくるのを止めたい本音もやっぱりあって。 でも、あのとき、あの子を助けた魔法の名前を受け継いで、 誰かを助ける仕事を望んでくれた…伝わる思いも、うれしくて。 また映像に目を移したら、ティアナちゃんを背負ったスバルちゃんが、 制限時間ぎりぎり、全速力でゴールに突っ込んでくるところ。 合格は間違いなしだった。 満点はあげられないけど、見せてくれた奮戦と結果は、納得するには充分すぎる。 そんな、感激の目で見ていたから、あやうく気づかないところだったけど。 「危険だ」 「…まずいね」 ヘリから一緒に飛び降りた。 このままじゃ二人とも、ゴールの先にある瓦礫に正面衝突だから。 最後の最後でこんなミス…危険行為の減点は大きいけれど、 今はそんなこと、気にしている場合じゃない。 覚悟くんは覚悟くんらしく、正面から二人を受け止めきるつもりみたい。 だったらわたしはその後ろからアクティブガードで、さらにやさしく受け止める。 誰も痛くないように…そう、思っていたんだけど。 スバルちゃんのとった行動は、覚悟くんの予想も、わたしの予想も超えていたんだ。 わたし達が受け止める体勢をとるよりも前に、スバルちゃんは、ティアナちゃんをお姫様抱っこして。 …自分で、仰向けに転んだんだ。 「んんうううぅぅぅぅぅぅッ!」 歯をくいしばりながら、背中でアスファルトを滑ってゴールを通過。 ティアナを上に載せたまま、平手を地面についてブレーキ。 わたしと覚悟くんよりはるかに前の地点で、速度を完璧に殺して止まった。 正直、言葉もなかったよ。 だって… 「…ゴール、だよ、ティア」 「っの馬鹿ぁ!」 バリアジャケットの上着は摩耗しきって消滅して、 肩とか背中とか、こすった後が一直線に赤く残ってる…地面に。 痛い、痛いよ。 これは痛い、見てるだけで。 「なんてこと、なんてことしてんのよ! あんた…あんた、正気ぃ?」 泣きそうな顔で胸ぐらを掴み上げてるティアナちゃんに、 スバルちゃんは少し笑って答えてた。 血みどろの背中に、全然気づいてないみたいに。 「その…ティアが、足、怪我してるから。 これで、公平かなって…」 「馬鹿言ってんじゃないわよ、なにが公平よぉ」 「それより、間に合ったよ、制限時間内に、ゴールできたみたい」 「んなの、どうでもいいわよっ、いくら、あんたが…」 覚悟くんが近づく。 わたしも近づく。 二人とも、それに気がついて、こっちを見た。 試験の結果は、今は二の次。 言ってあげなくちゃいけないことができたけど、 それは覚悟くんがやってくれそうだったんで、わたしは止まって待っている。 少しぼんやりした顔のスバルちゃんの正面に立つと、覚悟くんは。 「馬鹿者! 己が身を大事にせよ!」 開口一番で怒鳴りつけてくれた。 思わずきつく目を閉じるスバルちゃんに、かまわず続けていく。 「父と母より受け継ぎし玉身(からだ)。 昇格試験ごときで、粗末に扱ってはならぬ」 「…ごとき、じゃ、ないです」 だけど、ここでまた。 「ティアの夢が、かかっているんです。 ここでダメにしちゃったら、また半年先になるから。 半年も遅れちゃうから、だから…」 スバルちゃんは、明確に反論してきたんだ。 この試験には、これだけのケガをわざわざしてまで受かる意味があるって。 それは友達の夢を守ることなんだ、って。 そう聞かされた覚悟くんは、少し、むずかしい顔をしてから。 「その意気やよし」 「…わっ?」 「よくぞ、これほどになってまで守り抜いた」 脱いだ機動六課のジャケットを、スバルちゃんの背に放り投げるようにかけた。 当然だけど、覆い隠された傷口の部分から、すぐに血で汚れていく。 「だが、できるだけ自ら傷を負うことは避けよ。 おまえの友も喜ばぬ」 目配せされたティアナちゃんも、一瞬遅れて弱々しくうなずいた。 覚悟くんは満足するようにここから立ち去ろうとして、 その背中をまた呼び止められる。 「あ、あのっ、これ、上着」 「医務室で処置を受けて後、返しに来るがいい」 「でも、血で…」 「おれもあの時、きみの服をおれの血で汚したはず。 これにて公平!」 「…………」 あとは覚悟くん、振り返りもしなかった。 これからは、守るべき誰かじゃない。 一緒に戦っていく後輩になる。 覚悟くんに言わせてみれば、スバルちゃんは生命の恩人で。 スバルちゃんがいなければ、火事の中、一人で力尽きていて。 そんな子を戦わせるのはやっぱり嫌って本音は、きっと、どうにもならない。 でも、そんな覚悟くんだから、わたしはすっごく期待してる。 絶対に死なせたくなくて、その上、スバルちゃんの戦う意志が揺るがないなら。 覚悟くんは、スバルちゃんにティアナちゃん、それとまだ来ていない二人にも、 育てるために全身全霊を尽くしてくれる。 これは確信かな。 その後、試験が終わった二人に、すぐ機動六課の話を持ちかけた。 二人が出会った、あの怪人の背後関係を今は追っているって説明した。 だから多分、他よりも、ずっと危険で血なまぐさい仕事を請け負うことになるよ、って。 断りたければ、断ってもいい。 二人にはその権利があるから、って。 …答えはね、ふたつ返事だったよ。 これからよろしくね。 スバル、ティア。 わたしも、二人を絶対、死なせたりしないから。 スバル・ナカジマ、およびティアナ・ランスター。 この二名は良し。 だが、もう二名はどうか? エリオ・モンディアル、およびキャロ・ル・ルシエ。 魔導の素質すぐれたるフェイトの養子二人。 スバルとティアナが今回の試験にて勝ち取った陸士Bランクを、 エリオなる少年、すでに保有しているも、それだけでは信用できぬ。 精神(こころ)伴わぬ戦闘力は危うき候。 たとえるならば、嵐に揺らるるいかだの上、樽に詰まったニトログリセリンに同じ。 保有する大破壊力、正しく扱えねば自らを滅ぼす。 これ父、朧(おぼろ)の教えなり。 ゆえにおれは問わねばならぬ。 両名の、戦士としての了見を。 別にフェイトを信じぬわけではないが、こればかりは拳を突き合わせねばわかるまい。 両名を機動六課官舎に呼びつけて早々、おれは模擬戦を申し込んだ。 むろん、フェイトが立ち会う。 養子二人がこれより志望するは、殺意うずまく戦場なれば、 むざむざ死にに行かせるを承知するわけもなし。 ただ、これだけを言って、この模擬戦を許したのだ。 「私は信じてるよ。 二人の持ってる、ゆずれないもの」 「その言葉、覚えたぞ」 模擬戦場には、基礎的に廃墟を設定。 高速道路跡上にて、おれと両名は向かい合っている。 紅の少年と、桃色の少女。 まだ年端もいかぬ子供… とはいえ、おれとて十歳にして零式鉄球をこの身に埋め込んでいるのだ。 そして、さらには。 あの高町なのはも、フェイト・テスタロッサ・ハラウオンも… はやてまで、十歳に届かずして実戦に身を投じているという。 すなわち、身体未成熟であろうが、面影に幼さ残っていようが、あそこにあるは未知の敵。 いささかなりとも、あなどる気は無し! 「正調零式防衛術(せいちょう ぜろしきぼうえいじゅつ)、葉隠覚悟…参る!」 「…エリオ・モンディアルと、ストラーダ!」 「う、あ、あの…」 紅の少年、エリオは槍を掲げて返礼したが、 少女は気後れしきって何も言わぬ。 早くも底が知れたか? そのようなわけはあるまい。 「名乗れ! 戦う前から気迫に呑まれてどうする!」 一喝。 これでひるんでしまうならば、戦場に立つ資格なし。 だがそこで、傍らにいたエリオ、少女の背を軽く叩き、 振り向く少女に目を合わせ…うなずく。 そして再び、槍をこちらに構え、突き出す。 宣戦布告、確かに見たり。 少女もまた、気合いを入れ直し、今度こそ名乗った。 「召喚師、キャロ・ル・ルシエ! フリードリヒと、ケリュケイオン!」 エリオから多少の力をもらったか。 それも良し。 少女、キャロの背に隠れていた竜、フリードリヒも姿を現わし、開幕準備完了。 「…来い!」 戦士の礼にて、相手つかまつる! 前へ 目次へ 次へ
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第10話「再会は異世界でなの」 「フェイトォッ!!」 エイミィからの連絡を受けたアルフは、すぐさまフェイトの元へと駆けつけた。 幸いにも、彼女が相手をしていたザフィーラは「十分過ぎる成果を得られた」と言い残し、すぐに撤退してくれた。 その為、フェイトが倒されてからあまり間を空けずに到着する事が出来た。 彼女がその場に到着した時、そこに仮面の男の姿は無かった。 あるのは、意識を失ったフェイトとそんな彼女を抱きかかえるシグナム二人の姿だけだった。 「シグナム……!!」 「……テスタロッサの目が覚めたら、伝えておいて欲しい。 言い訳をするつもりは無い……すまなかったとな。 テスタロッサは、リンカーコアを抜かれてから大して時間は経っていない。 すぐに適切な処置をすれば、目も覚ますだろう。」 「え……あんた……」 アルフは、シグナムの言葉を聞いて少しばかりの戸惑いを覚えた。 自分達は敵同士、追う立場と追われる立場なのだ。 今、フェイトは極めて無防備な状態にある。 再起不能になるだけのダメージを負わせるなり、人質として連れ帰るなり、状況を有利に出来る手段は幾らでもある。 だが彼女は、その一切を取らなかった。 一人の騎士として、そんな卑劣な真似をしたくは無かったのか。 互角にまで渡り合えたフェイトに、敬意を払ったのか。 それとも……守護騎士として、主の名を汚したくなかったのか。 どれにせよ、シグナムが正々堂々とした態度を取っているという事実には変わりない。 「……敵同士で、こういう事を言うのもあれだけどさ。 その……ありがとうね、シグナム。」 「……礼には及ばない。」 シグナムはアルフへと、フェイトを手渡した。 そして、直後……彼女は転移呪文を使ってこの世界から姿を消した。 敵でありながらも、シグナムはフェイトの身を案じてくれていた。 アルフは、少しばかり複雑な気持ちではあったものの、その事に感謝していた。 とりあえず、何はともあれフェイトを急いで運ばねばならない。 アルフの術では、ここから時空管理局本局まで飛ぶのは流石に無理な為、エイミィに頼むしかなかった。 すぐさま、エイミィとの連絡を取ろうとするが……その瞬間だった。 突如として、激しい地響きが発生したのだ。 震源は真下……アルフの足元からだった。 「まさか!!」 嫌な予感がしたアルフは、すぐに上空へと飛び上がった。 この世界には人間は一切いないが、その代わりに大型の野生生物が多く存在している。 それが、今まさに現れようとしているのだ。 フェイトを抱えたままでは、対処の仕様が無い……彼女を安全な場所に避難させなければ。 すぐにアルフは術を発動させ、フェイトを先にエイミィの元へと送ろうとする。 「エイミィ、フェイトの事お願い!!」 『うん、もう本局に連絡は取れてるから何とかできるけど……アルフは?』 「流石に、二人一緒にってのは少し時間がかかるからね。 私なら大丈夫だよ、すぐに後から行く。」 『分かった……気をつけてね!!』 「ああ……!!」 フェイトの姿が、その場から消えた。 アルフの術によって、無事にエイミィの元へと転送させられたのだ。 後はエイミィがゲートを繋いで、フェイトを本局へと送ってくれるだろう。 これで、彼女の事は何とか安心できる……後は、自分の問題を片付けるだけである。 地響きが真下から来た事から考えれば、相手の狙いは間違いなく自分。 恐らくは、餌と認識されたのだろう。 「さあ、来るならさっさと来なよ!!」 アルフが構えを取った、その直後。 大量の砂塵を巻き上げながら、その生物は姿を現した。 青い体色の、顎が大きく発達した怪獣。 かつて、ウルトラマンジャックとウルトラマンエースの二人が戦った相手。 そしてメビウスも、その亜種と激闘を繰り広げた敵―――ムルチ。 「ギャオオオォォォォッ!!」 ムルチは口を大きく開き、アルフへと破壊光線を放つ。 アルフはそれを障壁で受け止めると、すばやくムルチの胸元へと移動した。 体格の差は圧倒的ではあるが、逆にそれが味方をしてくれた。 ムルチの巨体では、懐に入ってきたアルフに対処が出来ないのだ。 「ハアアァァァッ!!」 強烈な拳が、ムルチの胴体に叩き込まれた。 鳩尾に一撃……かなり効いている。 そこからアルフは、間髪入れずに拳の連打を浴びせた。 ザフィーラからの連戦だから厳しいかと思ったが、どうやら予想していたよりも大した敵ではなさそうだ。 アルフは少しばかりの余裕を感じた後、ムルチを沈めるべく一気に仕掛けた。 しかし……この時、彼女は思いもしなかっただろう。 もしもミライがいたならば気づけただろうが……本来ムルチは、こんな砂漠にいる筈がないなんて。 ムルチが、『巨大魚怪獣』の呼び名を持つ『水棲怪獣』であるなんて。 一応過去に一度、ムルチは地中からその姿を現したこともあるが……それでも、砂漠という環境は流石に無茶である。 ならば何故、ムルチがここで活動できているのか……その理由は一つしかない。 悪魔の魔の手は……既に、数多くの世界に広がっていたのである。 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 「ディバインシューター!!」 『Divine Shooter』 「シュート!!」 なのはは5発ほどの魔法弾を生成し、それをレッドキングへと一斉に放った。 しかしレッドキングは、大きく尻尾を振るってその全てを掻き消す……ダメージは皆無。 その後、レッドキングは再び大岩を持ち上げると、なのはへと投げつけてきた。 遠距離にいるなのはに仕掛けるには、これ以外の攻撃手段はレッドキングにはない。 確かに命中すればダメージは大きいだろうが、流石に攻撃が単調すぎる。 なのはには、あっさりと避けられてしまった。 「パワーは凄いけど、距離さえ離しちゃえば……!!」 レッドキングの戦闘スタイルは至って単純。 怪力に任せての、荒々しく凶暴なものである。 接近戦における圧倒的不利は、目に見えている。 しかし距離さえ離してしまえば、攻撃の手段は岩を投げる以外に無い。 両者の戦い方は、完全な対極に位置している。 その事実は、なのはにとっては幸運であり、そしてレッドキングにとっては不幸以外の何物でもなかった。。 流石にレッドキングもこのままでは不利と悟り、一気に距離を詰めにかかった。 だが……レッドキングが取った行動は、走ってくるとかそんなレベルの話ではなかった。 力強く両脚で地面を蹴り、文字通りに『跳んで』きたのだ。 これにはなのはも度肝を抜かれた。 幾らパワーが持ち味とはいえ、あの巨体でここまで跳び上がれるのか。 しかもスピードがある……回避は出来ない。 なのははとっさに、障壁を出現させる……が。 「っ……キャアァッ!!」 レッドキングは、2万トンの体重を持つ超重量級の怪獣。 そのロケット頭突きには、流石に堪え切る事が出来なかった。 なのはは後方へと大きくふっ飛ばされ、派手に地面に激突する。 ヴィータにラケーテン・ハンマーをぶちかまされた時と同じ。 いや、あの時以上かもしれない破壊力があった。 不幸中の幸いだったのは、地面に激突する寸前に、レイジング・ハートが自動的に障壁を展開してくれた事。 その為、何とかダメージは軽減できたのだが…… レッドキングは、ここで追い討ちを仕掛けてきた。 大きく足を上げて、なのはを踏み潰しにかかったのだ。 ロケット頭突き以上に危険すぎる……防御の有無抜きで、命中したら致命傷は免れない。 「ギャオオオォォォン!!」 「レイジングハート!!」 『Flash Move』 とっさに急加速し、間一髪攻撃を避ける。 その直後、相当な量の土煙が吹き上がってなのはの全身を覆い隠す。 あと少し遅れていたら、確実に踏み潰されていただろう。 そのままなのはは、素早くレッドキングから離れようとする。 しかし今度は上空には飛び上がらず、低空飛行で移動している。 これは、先程のロケット頭突きを警戒しての行動だった。 今レッドキングの周囲には、大岩は勿論、投げる事の出来るような物は一切無い。 普通に考えれば、なのはを攻撃する手段は無いように思われるが……先程のロケット頭突きの様な奇襲もありえる。 そう安易に考えてはいけないのは、なのはも重々承知していた。 そしてレッドキングはというと……そんな彼女の考えどおりに、仕掛けてきた。 投げる物が無ければ、作ればいい。 そういう風に考えたのだろうか、あろうことかレッドキングは、地面を怪力で引っぺがしたのだ。 そのまま、なのは目掛けて巨大な土の塊を投函してきたのである。 土は岩に比べれば、かなり脆い。 命中まで形をとどめる事が出来ず、上空で砕け散り、無数の土砂となってなのはへと降り注いできたのだ。 「っ!!」 『Wide Area Protection』 相手が岩ならば打ち砕けたのだが、土砂となるとそうもいかなくなる。 なのははとっさにカートリッジをロードして、広域防御結界を展開した。 その直後、彼女の身に大量の土砂が降りかかった。 あっという間にその全身は土砂の中へと埋まり、姿が隠されてしまう。 土砂は大量、結界も何もなしに埋まったのではまず助からないレベルである。 だが……レッドキングは、それで満足するような怪獣ではなかった。 なのははミライから聞いたときに少しばかり疑問に思ったが、レッドキングは名前に反して『白い』体色をしている。 ならば何故、レッドキングなどという名前が名付けられたか。 それは、この上なく凶暴で『赤い血』を見ることを何よりも好むからである。 レッドキングは、極めて獰猛かつ残忍なのだ。 かつては、自分よりも遥かにか弱い存在であるピグモンを徹底的に甚振り、死に至らしめた事すらもある。 そんなレッドキングが……土砂で覆い潰したぐらいで、満足するわけが無い。 「ギャアオオオオォォン!!」 確実な死を与える為、レッドキングは両手を組んで、地面へとハンマーフックを打ち下ろした。 それも一発ではなく、何度も何度もである。 拳が叩きつけられるごとに、土砂が勢いよく跳ね上がる。 そして、およそ十発程打ち下ろした後。 レッドキングは周囲を見回して、丁度いいサイズの大岩を見つけ出した。 仕掛けるのは、駄目押しの一撃……豪快に持ち上げて、そして地面に叩きつけようとする。 これで、まずなのはは生きてはいまい……そうレッドキングは思っていただろう。 だが……その瞬間だった。 『Divine Buster』 「ッ!?」 地面の下から、レイジング・ハートの声が聞こえてきた。 直後、眩い桜色の光が地面を突き破って出現し……レッドキングの手首に命中した。 レッドキングは思わず大岩を落としてしまい、そしてその大岩がレッドキングの足の指を直撃する。 かつてミライ達も取った、レッドキングにとって最も効果的な攻撃手段の一つである。 『ギャオオオォォォン!!??』 レッドキングは足を抱えて、悲鳴を上げた。 なのはは倒されていないどころか、全くの無傷。 何故なら彼女は今、土砂の下……攻撃の届かない、深い穴の底にいるからだ。 レッドキングが追い討ちに出てくるのは、容易に想像できた。 それをまともに耐え切ろうとするのは、自殺行為に他ならない。 そう判断したなのはは、土砂で姿が隠された瞬間に、地面に穴を空けたのだ。 後は攻撃がやむまで、安全な穴の中に身を隠すだけだった。 上方の土砂は、障壁を展開する事でなだれ込んでくるのを防いでいた。 そして、レッドキングが大岩を拾いにいき攻撃が中断された瞬間。 なのはは契機と見て、仕掛けたのである。 ちなみにディバインバスターを放ったのは、外の様子が分からない現状でも、攻撃範囲が広いこの術ならば当たると踏んだからだ。 「いくよ、レイジングハート!!」 『All right』 レッドキングの悲鳴から察するに、レッドキングは怯んでいる。 またとない攻撃のチャンス……仕留めるのは今。 なのはは一気にカートリッジをロードし、レイジングハートの矛先を斜め上へと向けた。 直後、膨大な魔力が彼女の周囲に収束し始めた。 カートリッジシステムに変更してからは、これが初めてになるなのは最強の魔法攻撃。 「全力……全開!!」 『Starlight Breaker』 「スターライト……ブレイカアァァァァァッ!!」 膨大な量の魔力光が、地面を突き破りその姿を現した。 そしてそのまま、真っ直ぐにレッドキングへと向かい……直撃。 レッドキングは猛烈な勢いで、光と共に上空へと打ち上げられていった。 数秒して、レッドキングは地上20メートル程の高さに到達し……そして。 ドグアアアアァァァァァァン!!! 大爆発。 レッドキングは、見事に打ち倒されたのだった。 なのはは、スターライト・ブレイカーによって吹き抜けになった穴の底から、それを確認する。 無事に打ち倒す事が出来、ほっと一息つく。 そして、彼女が地上へと出た時……ようやくメビウスが、現場へとその姿を現した。 彼は、既にレッドキングが倒されていたのを見て、少しばかり驚いた。 流石というべきだろうか……自分の助けは無用だったみたいだ。 「なのはちゃーん。」 「あ、ミライさん。」 「レッドキング、もうやっつけちゃったんだ……来た意味、あまりなかったみたいだね。」 「にゃはは……じゃあ、早く戻りましょう。 フェイトちゃんの事が心配だし……」 「うん……!?」 帰還しようとした、まさしくその時だった。 これで二度目になる、強烈な地響きが発生した。 揺れはかなり激しい……一度目よりも大きいかもしれない。 流石に立っていられなくなった二人は、上空へと飛び上がる。 そしてその後……同時に、レッドキングが出現した火山へと視線を向ける。 二人とも、とてつもなく嫌な予感がしていた。 まさかと思うが、もう一匹何かが来るんじゃなかろうか。 確かめる為、二人はエイミィに連絡を取ろうとする……が。 「あ、あれ……?」 「念話が、繋がらない……!?」 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 「レッドキングは倒され、ムルチも圧倒されっぱなしか。 ヴォルケンリッターを相手にした後で、よくやれる……」 広大に広がる砂漠、荒廃した建物の山々。 黒尽くめの男―――ヤプールは、自分以外には何者も存在しないこの異世界から、全てを見ていた。 そう……レッドキングとムルチを仕向けたのは、他ならぬこの悪魔だったのだ。 ヴォルケンリッターや仮面の男の御蔭で、多少なりともなのはとアルフは消耗している。 倒すのならば今がチャンスと感じ、現地に潜ませておいた怪獣を襲い掛からせたのである。 超獣は、怪獣がベースとなって作り出される生物兵器。 怪獣がいなければ、一部の例外的なものを除けば、基本的に作成は不可能なのだ。 そして、より強い怪獣がベースであればあるほど、生み出される超獣も強くなる。 そこでヤプールは、これまで異次元空間内に捕らえてきた多くの怪獣を、近辺の異世界に解き放ったのだ。 野生のままに暴れさせ、成長させる方が、より強くなるだろうと判断した結果である。 その内幾つかの怪獣には、既に軽い改造は施してある……ムルチもその内の一匹。 乾燥した、砂漠のような土地でも動けるよう改造してあったのだ。 無論、狙いはそれだけではない……今回の様になのは達が異世界に現れた際、それを撃退する事も目的である。 しかしながら、レッドキングとムルチは倒されてしまった。 ならば、次の手を打つまで……特になのはとメビウスの二人は、ここで確実に潰す必要がある。 魔力の蒐集が不可能な以上、二人は単なる邪魔者でしかない。 管理局の方に対しては、既に手は打ってある。 仮面の男が、自分達の足跡を下手に辿られない様にと、先程ハッキングを仕掛けておいてくれたのだ。 これは、仮面の男が管理局に通じているからこそ出来た裏技。 御蔭で管理局側からの増援は、当分の間食い止められる……思う存分に叩き潰す事が出来る。 ヤプールは、不適に笑い……新たなる僕を呼び出した。 「行け……ドラゴリー、バードン!!」 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 「エイミィ……?」 一方その頃。 ムルチと戦っていたアルフも、異変に気がついた。 いつのまにか、エイミィとの連絡が全く取れなくなっている。 あのエイミィに限って、現場から離れるなんてそんな馬鹿な事はありえない筈。 そうなると……考えられるのは、何者かからの妨害行為しかない。 ヴォルケンリッターか仮面の男か、どちらかもしくは両方か、自分達の足跡を辿られない様にしたのだろう。 しかし先程のシグナムの事を考えると、ヴォルケンリッターがこんな真似をするとは考えがたい。 (いや……そうとも言い切れないか。) 一人だけ、そんな真似をしかねない者がいた。 初遭遇の日、なのはに奇襲を仕掛けてリンカーコアを抜き取ったシャマルだ。 考えてみれば、ヴィータ・シグナム・ザフィーラの三人しか異世界には姿を現していない。 ダイナに関しては別として、シャマルは先日の戦いにも、直接の参加はしていない。 完全なバックアップ担当と見ていいだろう。 それに、あまりこういう言い方はしたくないが……一人だけ、正々堂々とは言い切れない。 彼女の性格はよく知らないが、それでも十分にありえる話だ。 勿論、仮面の男が妨害行為をした可能性もある……寧ろ、こちらの方が可能性としては高い。 仮にシャマルがやったのだとしたら、何でそれを今までやらなかったのかという話になるからだ。 だが仮面の男は、先日はベロクロンのゴタゴタに紛れてだったが、今回にはそれがない。 完全な形で姿を見せたのは、これが初……ならば、彼等であるのはほぼ間違いないだろう。 タイミング的にも、十分合う。 「どっちにせよ、こいつをぶっ倒してさっさと戻ればいい話さ。 とっとと決めに……!?」 とどめの一撃を叩き込もうとした、その瞬間だった。 何処からか、「ミシリ」と何かに亀裂が走るような音が聞こえてきた。 アルフはとっさに、その音源……上空を見上げた。 見渡す限り砂漠のこの世界に、そんな物音を立てられそうな代物なんて一つもない。 ただ一つ……昨日も目にした、空を除けば。 「まさか、嘘……!?」 ガッシャアアアァァァァァン!!!! 空が割れ、その超獣は姿を現した。 地球上に生息している蛾と、宇宙怪獣とを組み合わせて誕生した超獣。 かつて、エースとメビウスを苦しめた蛾超獣ドラゴリー。 ドラゴリーは着地すると、早速アルフへと攻撃を仕掛けてきた。 唸りを上げ、両腕を振り回す。 アルフはとっさに急加速し、その一撃を逃れる。 しかしその背後には、大口を開けて待ち構えていたムルチがいた。 「ギャオオオォォン!!」 「くっ……!!」 ムルチは口を開き、破壊光線を放つ。 アルフはとっさに障壁を展開し、その一撃を受け止める。 するとここで、今度はドラゴリーが背後から仕掛けにきた。 両の眼球から光線を放ち、アルフを焼き殺そうとする。 挟み撃ち……両方の攻撃を防御しきる自信はない。 ならばと、アルフは障壁を維持したまま上空へと急上昇した。 それにより、ムルチとドラゴリー両者の攻撃は、それぞれ正面にいる相手に命中してしまう。 見事、同士討ちをしてくれたのだ。 「ギャアアァァァ!?」 「グオオオォォォン!!」 「やった……あんまり、頭はよくないみたいだね。 それにしても、どうして……!!」 何故、ヤプールの超獣がこんな異世界に現れたのか。 先日の襲撃の件も考えると、やはり狙いは自分達ということになる。 メビウスに味方する者を全滅させるつもりなのは、まず間違いない。 ヤプールが闇の書を狙っているというのなら、尚更になる。 ここで自分が倒れれば、ヤプールは簡単に魔力を手に入れることが出来るからだ。 後は何らかの形で仮面の男同様にヴォルケンリッターに接触し、それを渡せばいい。 「全く、面倒なことしてくれちゃって……!?」 ここでアルフは、言葉を失った。 その眼下では、ドラゴリーとムルチが争いあっている。 同士討ちを狙った以上、それ自体はありがたいことなのだが…… 正直言うと、これは争いとは呼びがたい。 そう、それは……一方的な虐殺だった。 両者の戦闘能力の差は、圧倒的過ぎた。 ドラゴリーはムルチを、徹底的に甚振っていたのだ。 ムルチはドラゴリーに馬乗りにされ、滅多打ちにされている。 必死になって抜け出そうと、ムルチはもがいている。 だがドラゴリーは、無情にもそんなムルチの左腕と肩を掴み……その怪力で、一気に左腕をもぎ取った 鮮血を噴出しながら、ムルチがもがき苦しむ。 しかしそれでも、まだドラゴリーの攻撃は終わらない。 今度は右腕と肩を掴み、そして勢いよく右腕をもぎ取った。 ドラゴリーは、ムルチを徹底的に八つ裂きにしようとしているのだ。 ムルチが悲痛な叫び声を上げる。 それが癪に触ったのだろうか、ドラゴリーはムルチの嘴を掴んだ。 そして……両手で一気に開き上げ、そのまま顔面を真っ二つにしたのだ。 ムルチの泣き声が止む……絶命したのだ。 「っ!!」 あまりの酷さに、つい動きを止めてしまっていたが……そんな場合じゃない。 寧ろ、敵の注意がそれている今は最大の攻撃のチャンスである。 アルフはすぐに飛び出し、全速力でドラゴリーへと向かった。 魔力を乗せた拳を、その後頭部へと全力で叩き込む。 流石にドラゴリーも、この奇襲には反応できなかった。 少しよろけ、地面に倒れそうになる……が。 「キシャアアァァァァッ!!」 そう簡単には、倒れてはくれない。 ドラゴリーは踏ん張ると、振り向き、その鋭い目でアルフを睨みつけた。 強い殺意に満ちているのが、一目で分かる。 この超獣は、ムルチよりも遥かに危険。 即座にその事実を、アルフは理解する事が出来た。 「……どうやら、最初に来た奴ほど甘くはないみたいだね……!!」 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 「どうして、連絡が……」 「なのはちゃん、くる!!」 「あ、はい!!」 同時刻。 なのはとメビウスの前にも、ヤプールから送り込まれた刺客が現れた。 レッドキングが出現したのと同じ、火山の麓。 そこから唸りを上げ、その怪獣は現れた。 その姿を見て、メビウスは思わず声を上げてしまった。 現れたのは、ウルトラ兄弟最強と詠われた二大戦士、タロウとゾフィーを一度は葬り去った大怪獣。 メビウス自身も、かつて深手を負わされてしまった、最大の強敵が一匹―――火山怪鳥バードン。 レッドキングとは……格が違いすぎる。 「そんな……!! レッドキングの次は、バードン!?」 「キュオオオォォン!!」 バードンは高らかに泣き声を上げると、その場で強く羽ばたいた。 強烈な突風が巻き起こり、周囲の木々が次々に吹き飛ばされていく。 バードンの羽ばたきは、民家を一つ破壊する程の威力がある。 なのはとメビウスは、とっさに防御を固めるが……踏ん張りきれない。 「セヤァァッ!?」 「キャアァァァッ!!」 二人は突風に煽られ、後方へと吹き飛ばされてしまった。 特に、バードンとのサイズの差があるなのはの方は、100m以上吹き飛ばされてしまっている。 そうなると、攻撃対象が近くにいるメビウスの方となるのは必然。 バードンは大きく翼を広げ、メビウス目掛けて飛びながら迫ってきた。 その巨体からは想像がつかないほどの、とてつもない速さ。 とっさにメビウスはメビウスディフェンスサークルを展開して、バードンの嘴を受け止める。 嘴による一撃だけは、絶対に受けてはならない。 その恐ろしさがどれ程のものか、メビウスは身をもって味わった経験があった。 メビウスはすぐに間合いを離して、光弾をバードンへと放つ。 しかしバードンは、それを翼で弾き飛ばした。 そしてそのままの勢いで、メビウスに翼を叩きつける。 「グゥッ!?」 「キュオオオォォン!!」 「ミライさん!! レイジングハート、カートリッジロー……!?」 『Master!?』 「なのはちゃん……!?」 まともに胴体に打ち込まれ、メビウスが怯む。 それを見たなのはは、すぐさま助けに入ろうと、カートリッジをロードしようとした。 だが、その瞬間……異常は起きた。 なのはが胸元を押さえ、急に苦しみ始めたのだ。 顔色は悪く、汗も酷く流れ出ている……全身の震えも止まらない。 レイジングハートは、一体彼女に何が起こったのか、まるで分からなかったが……数秒して、事態を把握した。 よく見てみると、バードンの周囲の木々が枯れはじめているのだ。 『まさか……この生物は……!?』 「なのはちゃん、急いで地球に戻って!! バードンは、体内に猛毒を持ってる……このままじゃ危険だ!!」 「毒……!?」 バードンはその体内に、強力な毒素を持っている。 それが先程の羽ばたきによって、微量ながらも散布されてしまっていた。 なのはは運悪く、それを吸い込んでしまっていたのだ。 メビウスが嘴による攻撃を恐れていたのも、ここにあった。 万が一、刺されてしまった場合……直接毒素を注入されてしまうからだ。 このままでは命に関わりかねないと、すぐに撤退するようメビウスはなのはに促した。 彼女をこのまま戦わせるのは危険すぎる……バードンは、自分一人で倒さなければならない。 幸い、メビウスは空気中の毒素の影響は受けてはいない。 戦うことは十分可能……すぐに向き直り、構えを取る。 「セヤァッ!!」 「キュオオオォォン!!」 メビウスはバードンの胴体へと、蹴りを打ち込む。 バードンは少しばかり怯むも、すぐに持ち直して反撃に移った。 怒涛の勢いで繰り出される、翼による殴打の連打。 メビウスは防御を固め、反撃の隙をうかがった。 そして、その時はすぐに来た。 バードンが大きく振り被って、翼を打ち下ろしにかかる。 その一瞬の隙を狙い、メビウスは前転。 バードンの背後に回り込んで、一気に仕掛けにかかった。 「セヤァァァァッ!!」 メビウスブレスのエネルギーを開放し、拳に纏わせる。 必殺の拳―――ライトニングカウンター・ゼロ。 メビウスは勢いよく、全力でその一撃を背後から叩き込んだ。 直撃を受けたバードンは、呻き声を上げて地面に倒れ…… 「キュオオオン!!」 こまない。 とっさに地面へと両手をつけ、ギリギリのところで踏ん張っていたのだ。 その後、地面を蹴ってそのまま跳躍。 メビウスとは逆方向―――なのはのいる方へと、接近していったのだ。 肝心のなのはは、魔方陣を展開して撤退寸前だった。 しかし……この強襲を前にして、それを中断せざるを得なくなる。 とっさに、バードンを迎撃しようとするが…… 「っ……!!」 視界が霞んで、狙いが定まらない。 毒の影響が、予想以上に響いていたのだ。 ならば先程レッドキングに仕掛けた時のように、ディバインバスターでいくのみである。 なのはは気力を振り絞り、魔力を収束させる。 「ディバイン……バスタアアァァァァッ!!」 魔法光が放たれ、真っ直ぐにバードンへと向かう。 だが……その威力が、先程に比べて弱い。 毒による消耗のせいで、完全に力を出し切る事が出来なかったのだ。 バードンは迫り来る光に対し、口を開き高温の火炎を吐き出した。 ディバインバスターが、相殺されてしまう。 そのままバードンは、なのはへと接近……嘴を突きたてようとした。 なのはは、とっさに目を閉じてしまう。 しかし……その瞬間だった。 「グッ……!?」 「!! ミライさん!!」 なのはをかばって、メビウスがその一撃を受けてしまっていた。 深々と、バードンの嘴が肩に突き刺さってしまっていたのだ。 メビウスはすぐにバードンへと拳を打ち込み引き離すも、その場に膝をついてしまう。 これで彼の体内にも、毒が回ってしまった。 胸のカラータイマーが赤色へと変化し、音を立てて点滅し始める。 バードンはその様を見ると、高らかに鳴き声を上げる。 それはまるで、己の勝ちを確信し、嘲笑うかのようであった。 そして、トドメを刺すべくバードンが動く。 大きく口を開き、二人目掛けて火炎を噴出した。 (まずい、このままじゃ……!!) せめて……なのはちゃんだけでも……!!) 障壁の展開は間に合わない。 自分の体を盾にして、炎からなのはを守るしかない。 重傷を負うのは確実……最悪死ぬかもしれないだろうが、それ以外に方法は無かった。 メビウスは、迫り来る炎を前にして覚悟を決めた。 なのははそんなメビウスを見て、力を出し切れなかった己を呪った。 何とかして、メビウスを―――ミライを助けたい。 なのはとメビウスと。 二人が、互いを思い強く願った……その時だった。 祈りは通じた―――奇跡は起こった。 ドゴォォォンッ!! 「えっ!?」 上空から、二人とバードンとの間に赤く輝く光の玉が落ちてきた。 その玉が丁度、火炎から二人を守る盾の役割を果す。 なのははこの予想外の自体を前に、ただ驚くしかなかった。 しかし……メビウスは違った。 彼は、この光の玉に見覚えがあった。 やがて光は消え、玉の中から何者かが姿を現した。 メビウスと同じ大きさをした、銀色の巨人。 その胸に輝くは、六対の球体―――スターマーク。 そしてその中央には、蒼く輝くカラータイマー。 「兄さん……ゾフィー兄さん!!」 「ようやく会えたな……メビウス。」 ウルトラ兄弟を束ねる長兄―――ゾフィー。 予想していなかった、しかしこの上なく心強い増援を前にして、メビウスは思わず声を上げた。 ゾフィーはそのままバードンに蹴りかかり、その巨体を吹っ飛ばす。 その後、大きく首を振るい、己の頭で燃え盛っていた炎を消す。 どうやら先程火炎を受けた影響により、燃えてしまっていたらしい。 ゾフィーはなのはとメビウスへと振り向くと、掌をカラータイマーへと一度乗せた後、二人に向けた。 そこから、エメラルド色に輝く光が二人へと放たれる。 「あ……体が、楽に……!!」 なのはは、己の体が軽くなるのを感じた……毒が抜けたのだ。 それはメビウスも同様であり、そのカラータイマーは青色に回復している。 ゾフィーが、己のエネルギーを二人へと分け与えたのだ。 二人は立ち直り、そして構えを取った。 「メビウス、そして地球の者よ。 ここまで、よく頑張ったな……もう一息だ。 力を合わせて、バードンを倒すぞ!!」 「はい!!」 圧倒的不利かと思われていた形勢は、一気に逆転した。 ウルトラマンメビウス、高町なのは、ゾフィー。 今……三人の、反撃の狼煙が上がる。 戻る 目次へ 次へ
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第11話「兄弟の思い」 「ギャオオオォォォォォッ!!」 「くぅっ……なんて馬鹿力なんだい!!」 ドラゴリーの強力なパワーを前に、アルフが毒づいた。 先程、ムルチを惨殺した時点で薄々感じてはいたが、ドラゴリーの怪力は尋常じゃない。 チェーンバインドによる拘束を力ずくで破り、防壁による防御も強引に打ち砕く。 恐らくは、なのはが対峙していたレッドキングと互角以上。 しかもドラゴリーは、遠距離用の破壊光線も持ち合わせている。 一方それが乏しいアルフにとっては、こういったパワータイプの相手はかなり相性が悪い。 不幸中の幸いは、小回り面で完全に上回っている事だった。 アルフはヒットアンドウェイを基本に、真正面からはなるべく挑まずにいる。 「はああああぁぁぁぁぁぁっ!!」 拳に魔力を集中させ、後頭部へ全力で叩きつけた。 その衝撃で、ドラゴリーがよろける……ダメージは確実に通っている。 少し時間はかかるが、このままいけば何とか倒せそうである。 尤も、それには攻撃を回避し続けなければならないという問題はある。 相手の攻撃は、一発一発が大きい……一撃見舞われるだけで、形勢が一気に変わってしまうからだ。 「ギャオオオォォンッ!!」 ドラゴリーは大きく咆哮し、アルフ目掛けて拳を振り下ろしてきた。 アルフは即座にスピードを上げ、その一撃を回避。 拳は地へと打ち付けられ、莫大な量の砂塵が立ち上った。 アルフはその影に隠れ、ドラゴリーへと一気に接近。 この距離ならば、破壊光線はこない。 その腹部目掛けて、飛び蹴りを叩き込もうとする……が。 「ギャオォォ!!」 「なっ!?」 ドラゴリーが口を開き、火炎を放射してきた。 まさか、まだこちらに見せていない攻撃手段があったとは。 とっさにアルフは防壁を展開し、火炎放射を耐え切ろうとする。 しかし……防御の為に動きを止めてしまうのは、あまりに危険だった。 ドラゴリーは、この隙を狙い……全力の拳を叩きつけてきた。 ガシャン。 「キャアアァァァァァァァッ!?」 防壁が、音を立てて砕け散った。 アルフは後方へと大きくふっ飛ばされ、派手に地面に激突する。 そのまま、その身は砂の中に埋もれこんでしまった。 焼けた砂が肌を焼く。 早く脱出しなくてはと、アルフは上空へと飛翔。 砂の中から、何とか抜け出す……が。 「えっ……嘘!?」 脱出した彼女の目の前には、ドラゴリーの拳があった。 出てくる瞬間を、完全に狙われてしまっていた。 距離が近すぎる……防壁の展開が間に合わない。 アルフはとっさに腕を十字に組んでガードを取るが、これでどうにかできる筈も無い。 ここまでか……そう思い、彼女はたまらず目を閉じてしまう。 しかし……その瞬間だった。 ドゴォンッ!! 「ギィャアァァァァァァァァァァァァッ!!??」 「えっ……!?」 アルフに激突寸前だったドラゴリーの拳が、突然止まった。 よく見るとその肩からは、煙が生じている。 アルフもドラゴリーも、何が起こったのかまるで分からない。 しかし直後に、事態の意味を理解する。 ドラゴリーの背後に立つ……拳を突き出した、青い巨人の姿を見て。 アルフはすぐさまドラゴリーから離れ、その巨人の傍らへと近寄る。 「青い巨人……あんた、もしかしてメビウスが言ってた……ヒカリって奴?」 「ああ……メビウスの仲間だな。 何とか、助けられてよかった。」 ウルトラマンヒカリ。 かつてメビウスと共に地球を守り抜いた、青き光の巨人。 ゾフィーがメビウスの元に現れたのと同様に、彼もまたアルフを助けに現れたのだった。 アルフは彼の話を、メビウスから既に聞いていた。 メビウスすらも上回るかもしれない、強力な力を持ったウルトラマンと。 ドラゴリーはすぐに二人へと振り返り、破壊光線を両の瞳から放つ。 しかし、とっさにアルフが前に出て防壁を展開。 その攻撃を塞ぎ切ったのを見て、ヒカリは首を縦に振り彼女に礼を言う。 「ありがとう、助かったよ。」 「いいってこと、さっき助けられちゃったしね。 じゃあ、二人でとっととこいつをやっつけちゃおうじゃないの。」 「ああ……頼むぞ!!」 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 「キュオオオォォォンッ!!」 「くっ……!!」 バードンが大きく羽ばたき、突風を巻き起こす。 メビウスとゾフィーはしっかりと地面に足を突き、踏ん張ろうとする。 その二人の体が盾代わりとなって、なのはを羽ばたきの猛威から守っていた。 彼女は二人の御蔭で、受ける被害が少なくてすんでいる。 この隙にと、なのははカートリッジをロード。 迎撃に出るべく、周囲に魔力弾を発生させ始める……が。 なのはがそれを放つよりも早く、バードンが動いた。 強く地を蹴り、三人目掛けて真っ直ぐに滑空してきたのだ。 その嘴の狙う先は、ゾフィー。 まずは彼から始末するつもりらしい。 「ジュアアッ!!」 「ギュゥゥッ!?」 しかし、ゾフィーとてここであっさり敗北するほど愚かではない。 嘴が胸に突き刺さろうとしたその直前に、嘴を両手で掴みとったのだ。 突撃を阻止されたバードンは、ならばと大きく翼を羽ばたかせる。 ゾフィーをそのまま、上空へと持ち上げていったのだ。 「ジュアッ!?」 「ゾフィーさん!!」 『Accel Shooter』 この状況では、両手を離した瞬間に嘴で刺されてしまうだろう。 すぐになのはは、魔力弾を一斉に放った。 ここで注意しなければいけないのは、ゾフィーに命中させてはならないということ。 彼に当ててしまっては、元も子もない。 精神を集中させ、魔力弾を操作する……狙いは、飛行の要である翼。 「いっけぇぇぇぇっ!!」 「ギュオオォォッ!?」 攻撃は、見事に全弾命中した。 翼を撃たれたとあっては、バードンも現状を維持することは不可能……体勢を崩さざるをえない。 その瞬間を狙って、ゾフィーは嘴から両手を離した。 失速したバードンの嘴は、空しく空を切る。 契機……ゾフィーは、バードンの顎に蹴りを打ち込んだ。 バードンは空中へと打ち上げられ、そしてそのまま脳天から地面に激突する。 数秒遅れてゾフィーが着地……バードンが起き上がるのとほぼ同時に、右手を突き出し、その指先から蒼白い光を発射した。 Z光線―――かつてゾフィーがバードンと対峙した際に使った、必殺光線の一つである。 バゴォン!! 「キュオオオォォンッ!!」 爆発が起こり、羽根が飛び散った。 バードンは皮膚から黒煙を上げながら、悲鳴を上げる。 仕留め切ることこそ叶わなかったものの、確かなダメージは与えられている。 ならばと、メビウスが追撃にかかった。 まっすぐに飛び出し、その胴体に拳を打ち込む。 バードンはその攻撃に怯むも、すぐにメビウスへと翼で打ちかかった。 「ミライさん、伏せて!!」 「!!」 「キュオオォォ!!」 なのはの言葉を聞き、とっさにメビウスはその場に伏せた。 直後、バードンの翼が彼の頭上を掠める。 その次の瞬間……レイジングハートから、莫大な魔力光―――ディバインバスターが放たれた。 今度は先程までとは違い、本来の威力を取り戻している。 バードンは翼へともろにその直撃を喰らい、大きく吹っ飛ばされた。 「今だ!!」 なのはは、間髪いれずにバインド魔法を発動させた。 彼女は以前、ミライからウルトラマンが使う武器についての話をしてもらったことがあった。 そしてその時、彼は確かにいった。 その武器の内の一つ―――ウルトラマンタロウのキングブレスレットは、バードンを相手に絶大な効果を発揮したと。 タロウはかつてのバードン戦において、ブレスレットでバードンの嘴を縛るという奇策を取った。 それにより、バードンが放つ強力な火炎を封じ込んだのだ。 なのはが放ったバインドは、まさしくそれと同じ。 バードンの嘴を縛り上げ、しっかりと閉じさせたのである……これでは、もう火炎は使えない。 「よし……メビウス、離れろ!!」 「はい!!」 これで間合いを離せば、残る遠距離攻撃は羽ばたきだけ。 そしてその羽ばたきも……恐らく、先程までに比べて大幅に威力は落ちているに違いない。 アクセルシューター、Z光線、ディバインバスター。 ここまで使ってきた技の全ては、バードンの翼に集中して放ってきたのだ。 その翼は、今やかなり傷ついている……飛行して間合いを詰めてくるのも、容易では無いだろう。 「キュオオオォォン!!」 バードンは大きく翼を羽ばたかせ、突風を巻き起こそうとする。 だが……やはり、その勢いは衰えていた。 なのはでも、十分に耐え切る事が可能なレベル。 バードンは確実に弱っている……今こそが、撃破する最大のチャンスである。 三人は互いの顔を見て頷きあうと、トドメの一撃を放つべく行動に移った。 「ジュアアァッ!!」 勢いよく、ゾフィーが飛び出した。 風の勢いが無い今、バードンに近寄る事は容易い。 彼は上空へと飛び上がり、突風に逆らいながらバードンへと接近。 そのまま急降下し、その脳天へと蹴りの一撃を叩き込んだ。 バードンはその場に倒れこみ、脳天を押さえ悶えている。 それを合図に、なのはとメビウスが動く。 「ハァァァァァァァッ……!!」 「レイジングハート、カートリッジロード!!」 『Divine buster Extension』 メビウスがメビウスブレスのエネルギーを開放し、なのはがカートリッジをロードする。 それから僅かに遅れて、ゾフィーが両手の指先を己の胸元で合わせた。 その右手が、眩い光に包まれる。 直後……メビウスとなのはが、必殺の攻撃を打ちはなった。 「ディバイン……バスタアァァァァァァァァッ!!」 「セヤアアァァァァァァァッ!!」 メビュームシュートとディバインバスターが、バードンに直撃する。 バードンは呻き声を上げ、もがき苦しむ。 後もう一押しで、バードンを倒す事ができる。 そして、ゾフィーがそのもう一押しを打ち込むべく、動いた。 光り輝く右手を、バードン目掛けて真っ直ぐに突き出す……その右手から、轟音を上げて光が放出される。 ウルトラ兄弟最強の光線―――M87光線が、今放たれたのだ。 「ジュアアアァァッ!!」 メビウスとなのはが放った光線を、更に上回る破壊力。 その一撃を見て、なのはは驚きを隠せなかった。 もしかすると、スターライトブレイカー以上の破壊力があるかもしれない。 これが、ウルトラ兄弟長男の実力。 その直撃を受け、とうとうバードンは限界を迎えた。 大きく唸りを上げた後……爆発四散。 バードンは、ついに倒されたのだ。 なのはとメビウスが、喜び声を上げる。 そして、その後……二人は、ゾフィーと向き合った。 「ゾフィー兄さん……」 「メビウス……」 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 「ハァァァッ!!」 「そこぉっ!!」 アルフとヒカリの拳が、ドラゴリーへと同時に叩き込まれた。 ドラゴリーは後ずさり、叫び声を上げる。 だが、ドラゴリーもそう簡単には倒されてくれない。 両腕を二人へと向け、そこからミサイルを放って反撃する。 アルフはとっさに、障壁を展開してそれを何とか防ぐ。 そしてヒカリは、右手のナイトブレスから、光り輝く剣―――ナイトビームブレードを出現させ、ミサイルを切り払った。 そのまま間合いを詰め、ブレードを真っ直ぐに振り下ろす。 メビウスのメビュームブレードを上回る、ヒカリ必殺の剣。 その一撃を受けて、ドラゴリーの右腕が見事に切り落とされた。 「ギャオォォォォンッ!!」 「今だっ!!」 「ああ!!」 ドラゴリーが片腕を失った今こそが、攻めに出る最大の契機。 アルフはチェーンバインドを発動させ、その身を縛りにかかった。 怪力を誇るドラゴリーならば、チェーンバインドから抜け出すのは本来容易。 しかし、それはあくまで両腕があればの話……片腕の力だけでは、難しかった。 ヒカリは剣を収め、そしてナイトブレスに手を添える。 ナイトブレスの力を解き放ち、敵へと浴びせる必殺の光線―――ナイトシュート。 ヒカリは腕を十字に組み、その一撃を放った。 メビウスのメビュームシュートとは対照的な、蒼い光。 そしてその威力は……メビュームシュート以上。 「ギャオオォォォンッ!!??」 直撃を受け、ドラゴリーが背中から倒れこむ。 そして直後……爆発し、消滅した。 その様子を見て、アルフはガッツポーズをとった。 ヒカリもそんな彼女を見て、頷く。 お互いの協力の御蔭で、この強敵に無事打ち勝つ事ができた。 二人はその事を、相手に感謝していた。 「ありがとう、ヒカリ……えっとさ。 あんたがこうしてここにいるって事は、ミライの事……?」 「ああ、メビウスが出したウルトラサインの御蔭で、見つけ出す事ができた。 メビウスの元にも、もう仲間は向かっている。」 「そうかい……あっと、こうしちゃいられなかったね。 悪い、ヒカリ……折角助けてもらったのにさ。」 「分かっている、待っている人がいるんだろう? 俺の事は気にせず、行ってやれ。」 「うん……ありがとうね!!」 アルフはフェイトの元へと駆けつけるべく、転移魔法を発動。 この世界から姿を消し、元の世界へと戻った。 ヒカリはそれを見届けると、その場にしゃがみこむ。 そして……バラバラにされたムルチの死骸を手に取った。 「水生生物のムルチが、こんな所にいるわけが無い。 やはりこれは、何かしらの改造を受けているに違いない。 ならば、ドラゴリーが現れたのを考えれば……全ての元凶は、あの悪魔か……!!」 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 『そうか……分かった。』 「ゾフィー兄さん……ヒカリは、何て言っていましたか?」 「やはり、異世界に現れた怪獣はヤプールが解き放ったものである可能性は高いそうだ。 ……予想していた以上に、事態は進んでいるようだな。」 ヒカリからのテレパシーを受け取り、ゾフィーは重い顔をする。 今、メビウスとなのはは、ゾフィーから全ての事情を聞かされていた。 先日、ゾフィーとヒカリの二人は、メビウスの捜索に当たっていた。 ヤプールとの決戦に臨んだ異次元世界。 その入り口だった地点を、重点的に二人は探していた。 しかし、メビウスの足跡は全く見当たらなかった。 捜索を開始してから、それなりの日にちが経つというのに、全くの進展が得られない。 最早、メビウスを見つけ出すのは不可能なのではなかろうか。 光の国には、そう思う者も中にはいたが……決して、ウルトラ兄弟達は諦めなかった。 最後まで諦めず、不可能を可能にする。 それこそが、ウルトラマンだからだ。 そして、その末……ついに彼等は、メビウスを見つけ出した。 崩壊した異次元世界の入り口から、かすかな光―――ウルトラサインが見えたのだ。 メビウスが、毎日欠かさずにウルトラサインを送り続けてくれた御蔭だった。 すぐさまゾフィーは、ヒカリを連れてその向こうへと飛んだ。 ゾフィーは、異世界へと渡る力を持つ数少ないウルトラマンの一人。 かつて、エースがヤプールとの決戦に望んだ際も、彼の御蔭で異世界へと渡ることが出来たのだ。 その為、彼等はメビウスの元へと駆けつけられ……そして話は、今に至る。 ちなみにゾフィーは、ウルトラサインの御蔭で全ての事情は把握しているので、話はスムーズに進めることが出来た。 「はい……ゾフィー兄さん、僕は……」 「分かっている……共に戦いたいというのだろう。」 「はい。 僕は、時空管理局の皆さんにとてもお世話になりました。 皆がいなきゃ、僕はこうしていられませんでした。 だから……一緒に、戦いたいんです。 闇の書の事も、ダイナの事も、ヤプールの事も……皆と協力して、解決したいんです!!」 メビウスの強い決意の言葉を聞き、ゾフィーは首を縦に振った。 助けられた恩は、返さなければならない。 きっと、自分も同じ立場ならそうするだろう。 それに……ダイナとヤプールという要素が出てきた今、これは自分達の問題でもあるのだ。 ゾフィーはなのはへと視線を向け、自分の意思を彼女へと告げた。 「メビウスの事を……よろしく頼む。」 「ゾフィーさん……はい!! こちらこそ、よろしくお願いします!! あ、自己紹介がまだでしたね……私はなのは、高町なのはです。」 「ありがとう、なのは。 メビウス、この世界での地球に関しては、このままお前と時空管理局に頼もう。 我々兄弟は、近辺の異世界の捜索に当たるつもりだ。」 「分かりました。」 闇の書を初めとする地球での問題は、メビウスと時空管理局が変わらず引き受ける。 そして、近辺世界の捜索はウルトラ兄弟達が当たる事となった。 レッドキングやバードンといった自分達の世界の怪獣が、異世界に現れるようになってしまった。 このまま、怪獣達を野放しには出来ない……被害が及ぶ前に、自分達ウルトラ兄弟が怪獣を撃破する必要がある。 それに、恐らくヤプールは近辺世界のどこかに潜んでいるに違いない。 ヤプールの撃破の為にも、自分達がやらなければならないのだ。 「リンディさん達に、帰ったら伝えませんとね。」 「うん……じゃあ、ゾフィー兄さん。 ヒカリや兄さん達に、よろしくお願いします。」 「ああ……気をつけるんだぞ。」 その後、なのはが術を発動させ、この異世界から離脱した。 それを見届けると、ゾフィーも空高く飛び上がっていった。 宇宙警備隊と、時空管理局。 今この時……二つの組織は、手を組んだのだ。 平和の為、共に戦い合う仲間として…… ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 「よかったですね、ミライさん。」 「はい、ありがとうございます。」 数時間後、時空管理局本局。 帰還したなのは・ミライ・アルフの三人は、リンディ達と共に会議室にいた。 彼等はあの後、皆に異世界で起こった事の全てを説明した。 ヤプールが改造したと思われる怪獣が、異世界に解き放たれている事。 無事、ミライがゾフィーと再会できた事。 そして、ゾフィー達は今後異世界の捜索に当たってくれるという事。 話を聞き、リンディ達は大いに驚かされこそしたものの、全て承知した。 今回の事件は、かつてのPT事件とは比べ物にならない規模になっている。 宇宙警備隊の者達が協力してくれるというのは、願っても無いことであった。 直接会って話を出来なかったのが唯一残念ではあったが、目的は同じもの同士、いずれ再会は出来るだろう。 その後、リンディはフェイトの容態について説明を始めた。 「フェイトさんは、リンカーコアに大きな損傷を受けたけど……命に別状はないそうよ。」 「そうですか……よかったぁ。」 「そうですね……私と同じように、闇の書にリンカーコアを蒐集されちゃったんですね。」 「アースラが起動中でよかった。 御蔭で、なのはの時以上に素早く対処に回る事が出来たから。」 「だね……」 「……あの後、駐屯地中のシステムが全部、クラッキングでダウンしちゃって。 ごめんね……あたしの責任だ……!!」 エイミィは、今回の事件に対して深い責任を感じていた。 フェイトの救援を要請した後、何者かがハラオウン家中のシステムに侵入を仕掛けてきていたのだ。 その所為で、全てのシステムがダウン……一時的に、誰とも連絡が取れない状態になったのだ。 ミライ達が連絡を取る事が出来なかったのは、これが原因だった。 その後、エイミィは急いでシステムを復帰させ、本局への連絡を繋いだ。 丁度その時本局では、アースラの試運転の為にスタッフが大勢集まっていた為、迅速な対応を取る事が出来た。 「そんな、エイミィさんの責任じゃないですよ。」 「そうだよ……エイミィがすぐシステムを復帰させてくれた御蔭で、何とかなったんだしさ。 それに、仮面の男の映像だって何とか残せたわけだし……」 「けど……おかしいわね。 あのシステムは全部、本局で使われてるのと同じ物なのに……あんな頑丈なのに、外部から侵入できるのかしら?」 「そうなんですよ。 防壁も警報も素通りで、いきなりシステムをダウンさせるなんて……!!」 このクラッキングには、一つだけ腑に落ちないことがあった。 一体、どうやってあの厳重な防御を潜り抜け、システムを落としたのだろうか。 それも……一切の防御プログラムを、全く反応させずにという離れ業でである。 現在、防御システムはより強力なものへの組み換えを行っている。 再度の侵入だけは、どうあっても防がなくてはならない。 「それだけ、強力な技術者がいるってことですか?」 「組織立ってやってるのかもしれないね。 闇の書の守護騎士達か、仮面の男か、それともヤプールなのかは分からないけど……」 「タイミング的に、ヤプールの可能性が一番高いが……ミライさん、心当たりは?」 「あるにはあるんだ。 マケット怪獣っていって、怪獣のデータを実体化させて戦わせる技術なんだけど…… このマケット怪獣をネット上に出現させれば、ネットワークを侵略する事も可能なんだ。」 「怪獣のデータって……まあ、滅茶苦茶やばいウィルスってとこ?」 「そういうことになっちゃうね。 でも……これはGUYSのメテオールだから、ヤプールが持ってるとは思えないんだ。 もしかすると、僕みたいに体をデータ化させて、ネットワーク内に侵入できる超獣がいるのかもしれないけど……」 「体のデータ化……ミライ君って、そんなのまで出来るわけ?」 「はい、出来ますけど。」 さりげなく、かなり凄い能力について言ってのけた。 本当にウルトラマンというのは、人知を超えた力の持ち主である。 しかし、この話の御蔭で可能性は出てきた。 ヤプールによるクラッキングと考えるのが、現状では妥当な判断だろう。 「アレックス、アースラにはもう問題はないわよね?」 「はい、すぐに動かせます。」 「分かりました……予定より少し早いですけど、これよりアースラを司令部に戻します。 なのはさんは、御家の方も心配しているでしょうから、そろそろ帰らないとね。」 「あ、でも……」 「フェイトさんの事なら、大丈夫。 私達が見ているから……何かあったら、連絡するわ。」 「リンディさん……はい。」 駐屯地のシステムがクラッキングされるというアクシデントがあった以上、司令部はアースラに戻すのが妥当な判断である。 無論、それでフェイトの折角の学校生活を潰すという真似をするつもりはない。 出動待ちという形で、今まで通りの生活を送ってもらう予定である。 ミライも、彼女と同様の状態でいてもらおうと思う。 フェイトが回復するまでは少々時間もかかるだろうし、現状では彼が一番の戦力である。 「それじゃあ、私はこれで……」 『なのは、ちょっと待って。 少しだけ、話させてくれないかな?』 「あ……ユーノ君?」 なのはが帰還しようとした、その時だった。 無限書庫から回線を開き、ユーノが通信を入れてきたのだ。 彼がこうして連絡を入れてきたということは、闇の書についてなにかが判明したという事だろう。 なのはは足を止め、彼の話を聞くことにする。 「ユーノ、何か分かったんだな?」 『うん……ただ、分かったのは闇の書の事だけじゃないんだけどね。』 「え……ユーノ君、それってどういうことなの?」 『……ウルトラマンダイナの正体が、分かったんだ。 ミライさんの予想は当たってた……ダイナはやっぱり、異世界のウルトラマンだったんだ。』 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 「助けてもらったって事で……いいのよね……?」 「少なくとも、奴が闇の書の完成を望んでいる事は確かだ……」 同時刻、八神家。 ヴォルケンリッター達とアスカは、今日の事に関して話をしていた。 突如として戦いの場に乱入し、そして自分達を助けていった仮面の男。 彼に関しては、あまりに謎が多すぎる……一体、何が目的であんな真似をしているのだろうか。 唯一分かっているのは、闇の書の完成を望んでいるという事実だけなのだが…… 「完成した闇の書を、利用しようとしているのかもしれんな。」 「ありえねぇ!! だって、完成した闇の書を奪ったって、主以外じゃ使えないんじゃん!!」 「完成した時点で、主は絶対的な力を得る。 脅迫や洗脳に、効果があるはずも無いしな……」 完成後の闇の書を扱えるのは、唯一主であるはやてのみ。 他のものがそれを利用するというのは、どう考えても不可能なのだ。 ならば、何故仮面の男が自分達の手助けをするのか……それが、全く分からない。 皆が考え込むが……その時だった。 アスカが、ある可能性に気付いて口を開いた。 「……もしかしてさ。 あの仮面の男……俺達と同じように、はやてちゃんを助けたいって思ってるんじゃないのか?」 「あいつ等が?」 「まあ、それだったらどうしてはやてちゃんの事を知ってるんだって話にはなっちゃうけど…… あ、あくまでこれは、もしもそうだったらいいなって願望だから。 結局のところ、どんなつもりなのかは分からないし……やっぱ、警戒は必要だよな。」 「……一応、この家の周囲には厳重に魔力結界は張ってあるから、はやてちゃんに危害が及ぶ事はないと思うけど……」 「念の為、シャマルは主の側からなるべく離れないようにしておいた方が良いだろうな。」 「うん……」 兎に角、厳重注意する以外に今は手が無い。 はやての身に何も起こらないよう、自分達で精一杯守り抜かなければならない。 皆はこれまで以上に、一層気を引き締めて事態に当たろうと決意する。 しかし、そんな中……ヴィータが不意に、口を開いた。 「あのさ……闇の書が完成して、はやてが強力な力を得て…… それで、はやては幸せになれるんだよな?」 「どうした?」 「闇の書の主は、絶対的な力を得る。 私達守護騎士が、それは一番よく分かっているでしょう?」 「そうなんだけどさ……私はなんか、なんか大事な事を忘れてる気がするんだ。」 「大事な事って……ヴィータちゃん、どうしたのさ。 急にそんなこと言い出しちゃって……」 「……実を言うと、急にってわけでもないんだ。 ちょっと前から、こんな風に考えちゃってて……」 「ちょっと前から……いつ頃からだ?」 「あの、変な怪獣が現れた時から。 あの辺から、何か嫌な感じがしてさ……」 「怪獣……確かメビウスは、あれをヤプールだとか呼んでたけど……」 以前、結界を打ち破って現れた怪獣―――ミサイル超獣ベロクロン。 あの謎の生物の御蔭で、自分達は無事逃げ延びられた。 だが……あれが出現した頃から、ヴィータは何か違和感を感じていたのだ。 そう、ヤプールという名前を聞いた……あの時から。 自分達は、もしかしたら何か大切な事を忘れているんじゃないかと。 (ヤプール……何なんだろう。 前にも、どこかで聞いた事があったような……) 戻る 目次へ 次へ
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